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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire

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Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 04 15

ふたたび急行下していく彼女の視界に飛び込んできたのは、

「どうも、吹っ飛んでくれてありがとな!」

という言葉を残してはあらゆる車両を駆逐し、騒乱の中心線を突き進んでいく、ハヴォックの暴走だった。


一般車両など、ほんのひとかすりでも彼の肌に触れればガラスを霧散させて宙に舞い、遠くの路面へと叩きつけられていく。


そして極めつけは、30t積載の大型トラック――

あろうことか、それさえもがハヴォックの正面突破によって勢いそのままに浮かび上がり、横転しながら10数m先まで滑走していく。


ハヴォックは、その一連の障害に対して、ほとんど減速のそぶりすら見せなかった。破壊の慣性が、圧倒的な質量と容赦のなさをおなじ車内に乗せて無制限に滑っていくのだ。


「……どうなんだよそんなに張り切って!いい歳こいたおっさんだろ?明日、筋肉痛で泣くんじゃないのか!?」


「心配ご無用、スイムとヨガとスムージーが日課さ!」


火弾が肩をかすめたり、腰を打ったりしながら交わされた軽いやり取りの直後、ハヴォックはアイススケートのジャンプを彷彿とさせる動きで、空中でひらりと踵を返す。その勢いのまま、すれ違った4WDのリアガードをまるで取っ手のように片手でつかんだ。


身に合わぬ敏捷さから繰り出される、目にも留まらぬ速さの投擲――。

巨大な腕がたわみ、空気を裂く音が一瞬で周囲に満ちる。重厚な車体が、まるで弾丸のように放たれ、景色を横切った。


「……おい!やめとけって!」


(この落ち方は、“壁の外”――!)

危機を察した瞬間、ホットショットの体感時間は極限まで引き伸ばされた。


空気はまるで飴細工のように粘り、投げ飛ばされた車両の軌道すら、コマが抜け落ちた映像のように、断続的にしか目に映らない。 そんな停滞した世界のなかで、炎をまとった彼女の身体だけが、速度を失うことなく宙を駆け抜けていく。


燃え盛る体躯が灰色の路上を蛇行し、ある瞬間、45度の角度で急に跳ね上がる。

高速道路の枠外へ弾き出されかけた大型車のシャシーに、ホットショットは両腕を大きく広げながら滑り込んだ。


大胆な放物線を描きかけていた巨体――その全重量を、身の瞬発力を総動員した彼女はまるで

荷物を受け渡すかのように上から下へと垂直にいなし、寸分違わぬ制動で、あくまで高架道路の幅内に着地させるのだった。


やがて過集中の時間が終わり、現実の速度が戻ると同時に、空中をジェットの力で蹴り飛ばし、彼女はさらに前方へと駆け出していった。


ふたたび並走が始まると、ホットショットは敵の進路を鋭く先取りし、片腕を勢いよく振り抜いた。

「戦車もチリチリパーマに出来るこいつならどうだぁ!?」

赤い鱗粉をまとって一直線に奔るビームが、ハヴォックをめがけた。だが、その厚く湿った皮膚は、

継続照射される太い熱線すらもはね返す天然の装甲に他ならなかった。


「日サロの手伝いにもならなさそうだな……でかい弾じゃないとやっぱりダメか!」


「そろそろ黙りな、ハエめ!」

その嘲りに乗せて、ハヴォックは両脚を蹴り出す。踏み切った瞬間、街の空気が爆ぜるように振動した。次の刹那――彼のはちきれんばかりの無敵の肉体は、ビル壁面の巨大なネオンサインを引きちぎっていた。金属の骨組みに無数の電飾をちりばめた広告塔が、円を描きながら盛大に投げ飛ばされる。


「ぅおぉッッ――!」


叫ぶホットショットは急転し、看板のまわりに、螺旋を咄嗟に描くことでその一撃をなんとかかいくぐった。

だがその間にも、ハヴォックは高速下の道路へと――その舗装面を破砕しながら着地しており、地面を蹴ってさらに跳ぶ。


上昇と同時に怪物の体は橋桁にめり込み、青緑色した歩道橋の堅牢な

構造が、ねじれながらまるごと突き上がった。この衝撃的な光景に反応して、

近くの車列は水槽を叩かれた時の小魚じみた挙動で四方にばらけ、逃げ出そうとした拍子に次々と追突を重ねていった。


*


なんとか追撃に転じたいホットショットは、突発的な惨事に見舞われた地上の真上を横切り、

彼が、粉塵を上げて崩落させたばかりのビルの大穴へと飛び込んだ。


――その内部。空調の冷気が満ちるオフィスフロアを、ハヴォックは一直線に突き進む。

通路は狭く、壁は薄い――そのすべてを、ただ走るためだけにぶん回される腕と肩で破砕し、彼は躊躇なく進路をこじ開ける。


炎の航跡をまとって、それを追うホットショット。

彼らの接近を察した従業員たちは、悲鳴とともに左右へと跳ね、机の下や壁際へと転がるように身を隠した。

舞い上がる書類、吹き飛ぶデスク、衝撃で倒れるガラスのパーティション――

都市に根ざした日常のひとつが、いま、超人たちの突貫によって容赦なく蹂躙されていく。


そして、窓外を睨んだホットショットは、敵の次なる着地点を川向こうの道路と読み切ると、炎の尾をさらに鋭くして前に飛んだ。


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