表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/404

Issue#01 I I I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 04 14

その直後、間近にあった1台の車両が、逃げ場を失ってふたりの頭上へ覆いかぶさるように迫ってくる。

「どけっ!」

間髪入れず、ハヴォックの平手が舞う。鉄の塊は弧を描いて吹き飛ばされ、数m先の防音壁に、悲鳴のような金属音を上げて激突した。


他の車が、決死のハンドルさばきでふたりと衝突を避け続けることで、中央分離帯を背にした高速道路の一角に、異様な静けさを湛えた決闘の場が出来上がる。そのなかで繰り広げられるのは、「重量」と「敏捷」が拮抗する決死の格闘戦だ。


ハヴォックは、自慢の剛腕を疲れ知らずに振り回し続ける。その手は物を引っかく鉤爪の形に変じているが、斬撃の鋭さはない。もし何かが破壊されるとすれば、それは裂く力によるものではなく、あらゆるものを押し潰す圧倒的な圧力がそうさせるだろう。


その両腕が左右から交互に迫り来るさまは、駆り立てられたオオカミの群れが息をもつかせず獲物へ牙を剥き続けるようで、相手に片時の休息も許さぬ猛威に満ちている


対するホットショットは、空気の揺らぎすら嫌がって身をよじる蝶のように、研ぎ澄まされたフットワークでその猛攻を捌いていく。しかし、ただ逃げるばかりではない。そうした絶え間ない動きの中に、蜂のひと刺しにも似た精密な打撃を織り交ぜて、着実に相手を削り続ける。


その身ひとつで対象を三次元ごと包囲するかのように縦横無尽に飛び回り、噛みついてくる腕をあしらい、飛び込んでくる拳には己の肢をぶつけて軌道を逸らす。


手と拳足が交差するたび、風圧と熱が同等の激しさで正面衝突し、その余波は路面を斜めに刻み、大気そのものを軋ませるほどの震動となって周囲へ伝播し続けた。


しかしその均衡が、20数手目で突如として崩れた。

ハヴォックの片腕が大きく振るわれた際、その太い手が、偶然にも、ホットショットの足首を引っかけるようにして掴んでしまったのだ。


「あっ――」


「……おっらぁッ!」

機を見るに敏、男が全身の力を腕に集中させれば、


焔の少女は、重力が一気に下っていくあの気味悪い感覚を胸のあたりに覚え、

「うおッ!」

次の瞬間には背中から地面に激突する。


腰を軸に反動で跳ね上がると、男の腕はもう1度振られ、別の角度から灰色の路上へと打ちつけられる。

「がぁっ……!!!!」

衝突のたびにコンクリートが砕け、破片と粉塵がまっすぐ上に吹き上がった。

地表にはくっきりと亀裂が走り、中央分離帯の壁が横薙ぎに破断して砕ける。


6度目の振り回しで、ホットショットの身体は大きな弧を描き、停車中の乗用車の側面へ激突した。

鋼板が激しく凹み、ガラスが砕け散る。その衝撃にひたる暇もなく、獣人の全身を使ったひねり投げにより、彼女の身体はきりもみ回転しながら宙を切り裂き、ビル群のてっぺん近くまで放り上げられた。


「やばい、止まれ止まれ止まれ!――」

天地が逆さまになったままで片足を突き出し、体中の火先を逆巻かせる。そこで彼女はようやく不如意な上昇に制御をかけられた。


「――ふぅ……!」

一瞬、宙に静止し、ホットショットは深く息をつく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ