issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 04 13
その部屋は、外殻の禍々しさからは想像もつかないほど、
俗物的で、そしてあまりに享楽的な空間だった。
部屋全体の色調は、闇のごとき黒と、毒々しいショッキングピンクのネオン光のみで統一されている。
壁面を埋め尽くすのは、持ち主の自己顕示欲をそのまま具現化したような、奇抜なペイントが施された変形エレキギターの数々だ。
部屋の中央には、縁をネオン管でビカビカと装飾された、巨大な漆黒のテーブルが横たわっており、
その上には琥珀色の液体を湛えたクリスタルグラスが置かれている。
視線を奥へ向ければ、そこはさらに混沌としている。部屋の最奥、
手すりのある壇上は怪しげな青紫の照明に包まれ、本格的なDJブースが設置されているほか、
極彩色のライトで光り輝くバーカウンタースペース、さらには緑の羅紗が鮮やかなビリヤード台や、
騒がしい電子音を垂れ流すレトロゲームの筐体までもが所狭しと並べられていた。
そこに、軍の司令室たる厳粛さは微塵もない。
あるのは、成功したロックスターが道楽として設えた、貸切のVIPルームとしての退廃だけだった。
重低音に満ちる部屋の喧騒が、電子ロックが強制解除される警告の音と、
厚さ20センチの鋼鉄製ドアが壁に叩きつけられる衝撃によって破られる。
「ガザク艦長!!」
ネ=レネが風のように部屋へ踏み込み、彼がひとり酒に浸っている大テーブルへと詰め寄る。
続いてなだれ込んだカルテット・マジコの面々が見たのは、突然の侵入者に度肝を抜かれ、
椅子から転げ落ちそうになっている爬虫類型の巨漢――ゴチェヌコイ連合艦隊司令官、ガザクの姿だった。
「な、なな、なんだ!?敵襲か!?」
凶悪な服装のガザクは、乱杭歯が並ぶ口元を情けなく震わせ、手にしたグラスの中身を自身の軍服にぶちまけた。しかし、目の前に立っているのが見知らぬ暗殺者ではなく、
条約機構の特使であることに気づくと、その複眼を丸くして、安堵と困惑の入り混じった声を漏らす。
「ネ、ネ=レネ特使……?なぜあなたがここに?まさか、演出の変更ですか?いやしかし、そんな話聞いていないぞ……」
「はぁ?先ほど緊急コードでご連絡差し上げたではありませんか!?」
ネ=レネは、ガザクの巨大な執務机に両手を叩きつけ、身を乗り出して叫んだ。
その凄まじい剣幕に、ガザクは反重力浮遊の椅子ごとズルズルと後退する。
半球状の底部が放つ光の輪が、高級カーペットの上を逃げるように滑った。
「い、いや、その……」
ガザクは、凶悪な牙が並ぶ口元を情けなく震わせ、視線をネ=レネの剣幕から逃がすように宙へ彷徨わせた。
「ん?」
ネ=レネが、逃がさんぞとばかりに顔を近づける。
「……き、聞いていない」
「……は!?」
ネ=レネは絶句し、それから沸き上がる怒りで顔を真っ赤にした。




