issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 04 11
「それは……私たち星間条約機構が作り上げた、都合のいい『設定』なんです」
4人の視線が、一斉に彼女へと突き刺さる。ネ=レネは、祈るように胸の前で両手を固く組み合わせ、
自分に言い聞かせるように早口でまくし立てた。
「い……いいですか、よく聞いてください。今の宇宙銀河社会は、どこも新規の有望な惑星の囲い込みに躍起になっています。資源、労働力、観光、文化……未開の星は宝の山です。ですが、未熟な文明をイチから説得し、条約のメリットを理解させ、平和的に加盟させるには……あまりにも膨大な時間とコストがかかりすぎます」
「ってことは……もしかして?」
常に1歩引いた位置にいるさなが、この時に限っては、論理の行き着く先にある結論を誰よりも鋭く嗅ぎ取っていた。彼女の表情から急速に血の気が失われていく。仮面のようになった顔の中で、強張った口元が、言葉の続きを無言のうちに促していた。
「だから……その勧誘プロセスを効率化、したんです。皆さんもご存じの、徹底した成果主義の発想で」
ネ=レネは、罪悪感に押しつぶされるように視線を落とした。
「『北風と太陽』……あるいは、自作自演の『マッチポンプ』です。手口はこうです。まず、ゴチェヌコイのような武闘派が、条約内の『悪役』を演じ、未開の星を襲うふりをする。圧倒的な暴力によって恐怖でパニックに陥ったところへ、我々のような『理性的で慈悲深い保護者』が颯爽と現れ、彼らを救済してみせる。……単純な理屈です。そうやって『外からの脅威』を具体的に演出することで、本来なら数世代を要する種族統合のプロセスを、極限まで省略化してきたのです」
「……ようは、宇宙規模の『グッドコップ・バッドコップ』ってことかよ!おい!……アイス・キューブの怒りもごもっともだな」
アシュリーの声色が、にわかに熱くなった。
「はい……。そうすれば、救済された星の人々は、むせび泣きながら感謝し、進んで、我々の保護下――すなわち条約への即時加盟を懇願してきますから。ゴチェヌコイは、その汚れ役を専門に請け負うことで、条約機構内での強大な発言権と報酬を得ている、極めてビジネスライクな文明なんです!」
「そんな……サイテイ……」
はちるが、信じられない汚物を見るような目でネ=レネを見る。
「私だって!個人的には、こんなやり方は大反対です!でも、それが結局、最高効率のやり方で……!」
ネ=レネは、悲鳴に近い声を上げた。
「待って……。じゃあ、あの時……」
おせちの顔から、さぁっと血の気が引いていく。彼女の脳裏で、
あのクワウバン艦隊の個室で交わした総督との対話――あの理知的で、
誠実そうに見えた提案の記憶が、不気味な色を帯びて再生される。
「総督が私たちに持ちかけた『準加盟』の話も、もしかして……」
彼女は、すがるような、それでいて答えを聞くのを恐れるような目でネ=レネを見つめた。
「……それも、その『成功パターン』の応用だったの……?最初からそうやって、危機感と恩義をセットにして売り込むための……?」




