issue#05 I I I Why Can't We Be Friends? CHAPTER 04 08
漆黒の虚空。そこには、無数の鋭利な棘を全方位へ逆立てた、
禍々しいシルエットを持つゴチェヌコイ連合艦隊が展開している。陣形が成立したあとは、
彼らは一切そこを動いていない。恒星の光すら冷ややかに拒絶するその佇まいは、
あたかもこの宇宙というキャンバスに描かれ、永遠に固定された1枚の巨大な背景画のようだった。
その凍てついた時空のただ中を、1筋の熱量が、恐るべき繊細さで渡っていく。
「ロング・カウンター」。
黄色い塗装が施されたピックアップトラックのテールから、紫色の縮退光が間欠的に吐き出されている。
それは、旗艦との相対速度を極限まで同調させるための、細かく、神経質なアフターバーナーの瞬きだ。
万物が死絶したかのごとき静寂の宙域にあって、その途切れ途切れな光の明滅だけが、
唯一、生命の脈動を伴った「動」のベクトルとして、見る者の網膜へその存在感を鮮烈に刻み込んでいくのだ。
車体は一定の速度を保ち、忍び寄るようにして旗艦の側面を横切っていく。
周囲を取り囲む宇宙の巨魚たちに、この矮小な船を突っついてやろうなどという気持ちは、
稚気としてさえ起こらないようだった。彼らはただ、よく飼い慣らされた猛獣の無関心さでもって、
眼下の微物を完全に黙殺し続けた。
その無謀な接近に呼応するように、巨艦の脇腹にある分厚い装甲ハッチが、
重々しい駆動音を立ててスライドする。さらけ出されたのは、
紅蓮の誘導灯が規則的に並ぶハンガーの咽頭だ。
トラックは慣性をドリフトで強引に殺しながら、開口部へと滑り込む。
空間に張り巡らされた磁気ネットが車体を捉え、着艦の物理的衝撃が鋼鉄のデッキを激しく揺らした瞬間、背後のハッチが獲物を飲み込む獣のように食らいつき、閉鎖された。




