issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 05 55
改造作業は、艦内の昼夜サイクルをまたぎ、一貫した熱気の中で続けられた。
まず足回りから、車は概念ごと刷新される。4本の古びたゴムタイヤは取り外され、代わりにクワウバン製の可変重力推進ユニットが装着された。
黒いリングの内側では、重力制御フィールドを形成する極薄の積層プレートが幾重にも重なり、
微調整用のスタビライザーが鋭い金属光沢を放っている。
フロントには、『マッドマックス 怒りのデスロード』でマックスが取り付けられていた金属製の轡を彷彿とさせる、鋼鉄のカンガルーバーが溶接され、不必要に荒々しい面構えを作り出した。
ボンネットを開けば、原始的な内燃機関は跡形もなく撤去されている。
空いた心臓部には、コンパクトながら最新鋭の縮退炉が慎重に据え付けられ、
そこから伸びる紫色のエネルギーパイプと冷却ラインが、血管のごとく車体フレームの隅々まで張り巡らされた。
稼働試験のたび、管の内側を妖艶な輝きが走り抜ける。その様子を覗き込み、はちるは目を輝かせた。
「見て見て!内臓総取り替え!これで心臓はピッカピカの最新式だよ!」
「比喩としては少々物騒ですが……性能については保証いたしましょう」
付き添いの技術士官は、タブレット上で診断データを走らせながら請け合う。
「この縮退炉とワープユニットは我々にとっても逸品ですよ。この出力ならば、地球帰還どころか、ギガパーセク単位の深宇宙探査さえ可能です」
当然ながら、これほどのオーバーテクノロジーは、正規の手続きで譲渡される類のものではない。
この破格の提供には、クワウバンからの、言葉にできないほどの深い感謝と敬意が込められていた。
ワープドライブのコアユニットは、あえて荷台へ無骨に直付けされた。直方体のコアを、リング状のアンテナと複雑な制御フレームが取り巻き、そこから伸びる極太のパイプが紫の脈動を伝えるたび、車のフレーム全体が低く、力強い共鳴音を奏でる。
テールゲートの背後には、自動車のクラッチを思わせる缶詰型の――意匠も細やかなメインスラスターが強引に接続され、シャーシの各所には姿勢制御用の小型バーニアが穿たれた。
そして仕上げに、ルーフには戦車調の武骨なキューポラが増設され――そのすぐ隣に、資材置き場の片隅から発掘されたという、”おまる”サイズの巨大な黄色いラバーダックが、強力接着剤で鎮座させられた。
「”ここ”!絶対に譲れないポイントだからね!」
はちるは、ゴム製のアヒルの頭を満足げに撫でる。
「ただ色がおんなじだからくっつけただけだろ?」
アシュリーの至極真っ当なツッコミに、
さながくすくすと笑った。
「カワイイからオッケーです。守り神みたいなものだよ」




