issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 05 54
「……これを……宇宙船に、ですって?」
格納庫の端、クワウバンの技術士官が、困惑と興味をないまぜにした表情で振り返った。
全身をサイボーグ化した彼女の手には、業務用のデータパッドが握られている。
その視線の先で、はちるは誇らしげに胸を張っていた。
「そう!この子、絶対飛べる顔してる。ちゃんと登録してるスクラップなら、もらってもいいって総督が言ってたもんね?」
「ええ、構いませんが……」
士官は言葉を濁し、ポンコツ車へと視線を走らせる。
「ですが、これは廃棄予定だったただの車両ですよ?帰還用には、最新鋭の小型艇をこちらで手配しておりますが……」
「……これがいいです。改造はこっちでできますから!」
はちるが上目遣いで、捨てられた仔猫のような瞳でねだるように言うと、
技術士官は小さくため息をつき、諦めたように端末を操作した。
「なるほど、わかりました。では、必要なパーツの一覧を提出してください。
安全基準を満たす設計であるならば、我々も技術協力いたしましょう」
「やった!」
「本気?ほんとにこの鉄クz……じゃなかった、クラシックカーで地球まで戻るつもりなの?」
はちるの背後で、おせちが呆れと慈愛を半々に混ぜた苦笑いを浮かべた。
「うん!だってさ、ピカピカの完成品をポンってもらっても、なんか『借り物』って感じで落ち着かないでしょ?」
はちるは、錆びたフェンダーを愛おしげに撫でる。
「ウチらの“マイシップ”はさ、こういう、手触りのあるヤツがいいんだよ」
その独特な理論に、さなとアシュリーも顔を見合わせた。
「わたしも、いいと思う。……この車、なんだかあったかい匂いがする」
「……ま、確かに優等生みたいなツルッとした船は、私らには似合わないけどなぁ――」
アシュリーは腕を組み、差し出した靴裏でタイヤをこすってみる。
「……でもお前、作れんのか?車を宇宙仕様にするなんて、日曜大工とはワケが違うんだぞ」
「できるし!マクロブランクの実験ずっと見てたから、理論はバッチリだもん!」
はちるは頬を膨らませてムキになり、頼もしく胸を叩いた。
「地球製のポンコツ車体に、クワウバン製のカスタムパーツか。たしかに友好の象徴って感じだよね」
おせちは、そのちぐはぐな組み合わせを想像し、ふっと表情を緩ませた。
「――うん。メチャクチャだけど、だからこそ『私たちっぽい』かも」




