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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
Issue#04 I I I I Tales from Topographic Oceans

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issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 05 19

天から降り注ぐ岩塊の手。その影が、水球の全てを飲み込んだ。触れるよりも早く、

先行する暴風圧だけで海水が叫びを上げる。完全な球体だった繭は、

見えざる万力に締め上げられたかのようにひしゃげ、歪な楕円へと押し潰された。

伝播する圧力の波が、艦艇の外殻を飴細工のように歪ませていく。


「衝撃に備えろ!全バリア最大出力!」

「まだ乗れてない者がいる!待ってくれ、あと1グループ――!」

「だめだ、閉じろ!ここでハッチを開けていたら、全員持っていかれる!」


艦内を満たすのは、怒号と懇願の嵐。 手すりにしがみつく幼子を、母親が震える腕で抱き締め、

濁った窓の外を凝視する。


格納庫の、フィルター越しに映る光景は、クラゲ都市を包む水球の全体が、

圧壊寸前の風船のごとく変形している。外皮は極限まで引き伸ばされ、

ドームとドームが接触し、互いを削り合いながら、散りゆく火花のように砕け散っていた。


「総員、退避!座標維持は不可能――」

悲鳴のごとき指令は、轟きにかき消され、誰の耳にも届かない。

天を埋め尽くす岩盤の軋みは、音の領域を超え、空気が直接、耳を潰しにかかる凶器と化す。

死の「予感」ではない。全員が、この直後に訪れる未来を確定した事項として理解した。


――刹那。


その必然が覆る。


空を塗りつぶして堕ちてきた岩の5指が、見えざる釘で虚空に打ち付けられたかのように凝固した。

行き場を失った破壊の運動量は、暴風へと姿を変え、その太腿より下の海原をあまねく薙ぎ払う。


直撃を免れた水球の表面を、荒々しい波紋が駆け抜けた。

球体はこの期に及んでさらに歪み、耐えきれなくなった外縁の海水が、飛沫となって壮大に四散する。


艦内。サブノーティカの老人は、震える指を組んで祈りを捧げ、クワウバンの操舵士は、

レバーをへし折らんばかりに握りしめている。

訪れるはずの終焉が、来ない 生きているという実感よりも先に、共通の疑問が彼らの心を支配した。


――なぜ、攻撃は止まったのか?


答えは、即座に虚空へ描かれた。


天を塞ぐ巨人の左眼窩。そこを斜めに走る大陸の継ぎ目が、耐え難い内圧によって強引に押し広げられる。岩盤が砕ける音と共に、深淵からド迫力に噴き上がったのは、この惑星の赤熱した血。引き裂かれた地殻の傷口から、紅蓮のマグマが宇宙へと逆巻く。

立ち昇る幾1000の火柱は、重力を振り切って暗黒を焦がし、凍りついた世界に鮮やかな生の色を焼き付けていった。


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