issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 05 20
噴き上がる溶岩の瀑布、その切っ先を猛然と引き裂いて翔ける影がある。
纏う炎、不敵な赤――まぎれもない、それはホットショット。
先刻、全力の一撃とともに虚空の彼方へ逃げ去った光など、熱で即興したデコイに過ぎない。
つまるところ真実は、あの瞬間、オーシャンマンの鼻梁を貫いた特大の熱線こそが、肉体を弾丸と化した彼女そのものだった。
世界の監視をごまかして、大地の裂け目より深奥へ侵入した彼女は、惑星の巨体を内部から食い破り、
噴血のごときマグマと共に外界へ舞い戻ったのだ。
*
ホットショットが突入した先は、臓腑とも回路とも言いがたい異界だった。
岩と金属、そして未知の鉱物質が複雑に折り重なる迷宮。
その内側を、橙色の光条が絶え間なく流動する。体内の全方位へ張り巡らされた輝けるトンネルは、
内核から沸き上がる大いなる鼓動と同期し、生命の明滅を繰り返していた。
「……これが、こいつの神経か……」
プラズマの血流が渦巻く只中で、ホットショットは体表の炎を抑制し、奔る光の束を凝視する。
風も水も存在しない空間だが、彼女のポニーテールは見えない力場に引かれ、
後方へ呑気になびいてく。
ニューロンの1室――彼女にとっては純白に発光するドームスタジアムほどの空間は、
無数の方角へ軸索を枝分かれさせ、星の意志をあちらからこちらへと伝達し続けている。
「まっ、1度の献血で全部よこせってのはボりすぎだよな。ここは計画的に、一部だけ借りていこう」
にんまりとして、彼女は片手を突き出した。
掌の火が、熱い血流の波長を捉える。触れた1点から、光の筋がほどけた糸のように逆流し、
ホットショットの肉体へ貪欲に吸い上げられていく。
「よし……!」
みずから引き起こしたエネルギーの暴走を振り切るように、身を翻して翔ける。
「まあ見とけ、悪いこと考えるより、こっちの方がよっぽどマシな使い方だから!」
シナプスからシナプスへ――侵入経路である裂け目を目指し、煽るように、嘲笑うように、
逃げる魚の身のこなしで次から次へと曲がり角を選び取る。
背後から噴く炎は、もはや彼女単独のものではない。星の核から略奪した熱量と己の魂が混ざり合い、
アフターバーナーは白に近い蒼へと昇華し、長く鋭い雷光の軌跡を焼き付けていた。




