表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
Issue#04 I I I I Tales from Topographic Oceans

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

412/456

issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 05 17

オーシャンマンは、瞬きひとつしなかった。


ただ、首をわずかに左へ巡らせる。

その動作ひとつが急激な造山活動、あるいは自転運動そのものだった。

太陽の照射角が秒刻みにうつろい、昼夜境界線が頭頂から顎にかけてのラインを滑っていく。

先ほどまで朝だった峰に夕日が落ち、夜だった谷に新しい朝が訪れる。


その自転運動の中に、黒煙の柱があった。


火球が変容した爆風の名残が、惑星規模の大気循環からひとり取り残されたまま、

鼻の横でなお縦の輪郭を保ち続けている。だが、その孤立も長くは許されなかった。


海の青さを薄膜とする大巨人の皮膚。その表面に、

ひとすじの有無を言わさぬ大きな流れが存在したためである。


――ジェット気流。

V字に広がってどこまでも伸びていく雲のマーブル模様が、首の旋回によって角度を変える。

黒煙の柱の真横から襲いかかり、煙が千切れた。


上層から下層へ、繊維がほどけるように分解され、雲の大河の中へと無理に伸ばされ、

引きずり込まれていった。


突きつけられた結果は、あまりに重い。全力を込めたはずの一撃は、首の運動が生んだ横風だけで惑星の天候の一部に変換され、配分され、希釈されていった。

焦げ跡のくぼみには、地形のかたむきに沿って巧妙に海水がなだれ込み、沸き立つ白い泡がぶつかり合うのを最後に、何事もなかったかのようにすべての痕跡が塞がれていく。


……表情筋はピクリとも動かない。そもそも、この巨大な神経網が「痛み」として認識する閾値に、ホットショットの全力は届いてすらいなかったのだ。

星という桁外れの存在を前に、ひとりの熱量になど意味はない――判明したのは、それだけの事実。


ホットショットは、糸が切れたような緩慢な動作で、ふわりと戦域を離脱した。引きずる赤い光跡は、敗走の忸怩たる気分を隠そうともせずに、ただ虚無の暗がりへと吸い込まれて、小さくなり、やがて、星々の点描の中に紛れて見えなくなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ