issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 05 16
《さあ、我にそなたらの意思を示すがよい。良き人々よ》
「……負けたらママって呼びな」
虚勢か、あるいは本気の挑戦状か。言葉にするのも無粋な熱量を込め、ホットショットは突き出した腕の両掌を重ね合わせた。祈りではない。圧縮された熱が臨界を超え、周囲の星明かりごと空間をレンズのようにねじ曲げる。
――ズォオオッッ!!!!
紅蓮の槍が、真空を焦がして突き刺さる。反作用が彼女の身体を木の葉のように宇宙の暗がりへ弾き飛ばすが、その分だけ光帯は慈悲なく伸び、オーシャンマンの「顔」――大陸が隆起して形成された鼻梁の峰へ、正確に吸い込まれていく。
直撃。
閃光が、岩肌の色を一瞬で消し飛ばした。黒かった地殻の表土が白に裏返り、白が透明に変わり、透明が光そのものに変わる、その遷移が、またたきひとつ分の時間に圧縮される。
固体だったはずの地殻が液状化し、融けた橙色の飛沫となって四方八方へ跳ね上がるさまは、
岩だった記憶を一瞬だけ保ったまま、自身が岩であることを忘れていく途上の、静かな反乱に似ていた。
爆心点を起点に、同心円の衝撃波が鼻梁の稜線をはい上がり、その通過した場所から順に、岩盤が砂糖菓子のように崩落していった。何億tの地殻が、抵抗の素振りすら見せずに、波の通過と前後しただけで存在の重みを失っていく。膨張する火球は、背後の星々をも一時的に塗り潰し、やがて真空の中でゆっくりと、餅の膨らむように広がっていく。
直径にして5km以上のクレーターが穿たれ、火球は、もっとも純粋な白色の熱量を保つところだけでもその何倍かに達した。その縁からたまらずこぼれ咲いた大輪の彼岸花――溶岩の放散は、顔面を成す大陸の表土に赤い筋をどこまでも放胆に引いていく。
1本、2本、10数本。地上に命中するたびに、小さな火口が新しく咲き、咲いては隣の火口と融合し、
分散した火口が無数の赤い染みへと成長していった。
地球のような文明圏の星における戦闘では、何があろうと絶対に放たれることはない一撃。
だからこそそれは、ホットショットというヒーローの全力をあますことなく体現した一撃。
地球であれば都市が――いや、「地方」がひとつ、輪郭ごと蒸発する火力だ。
しかし、カメラを衛星軌道まで引けば、その凄絶な破壊は、巨人の鼻先にうっすらと浮かんだ赤い染みにすぎない。5kmのクレーターも、彼岸花の群落も、白く燃え盛る火球の中心も、画面の中で1点の赤に圧縮され、識別を許されなくなる。




