issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 05 13
その直下では、か弱い少女が放った紫の光が、都市を包む薄い膜となって定着した。
暴力の網を抜けてきた獣たちは、数100kmを超える速度を保ったまま、その柔らかな輝きへ真正面から激突する。だが、光の壁は揺らぎすら見せない。
頭を打ち付けた者たちは一様に勢いを殺され、激しくくねる身によって、滑らかな表面をなぞるようにして、渦の外側へと無残に弾き出されていった。
紫電を宿したガンブレードが、昏い海中で一閃する。眼前に立ちはだかるのは、数え切れぬ鱗と無数の魚眼が織りなす、狂気じみた生体の壁。イムノは躊躇わない。レモン味のソイルを炸裂させ、自らを1条の雷光へと変えてその只中へ突貫する。
海水という絶好の導体を伝い、致死の高電圧が敵の神経網を瞬時に焼き焦がす。迫りくる魚群はさながら肉の暴風雨。だが、雷速の斬撃はその隙間を縫い、逆巻き、幾何学的な死の軌跡を描いて駆け抜ける。
硬質な鱗も、分厚い脂肪も、紫電の刃の前では無意味に等しい。
両断された断面から噴き出す鮮血は、刀身の超高熱によって瞬きする間に沸騰し、白濁した泡沫となって海へと溶け消える。
だが、敵は個体としての感情や痛覚を欠落させた、ひとつの巨大な「質量」として押し寄せていた。
恐怖を知らぬ肉の本流は、目の前で仲間が挽肉に変わろうとも止まらない。3人が敷いた防衛線のわずかな綻びを、死骸を踏み越える重量と数だけで強引にこじ開けていく。
「しまっ――!」
重なる衝撃に結界が弾け、ついに限界を迎える。裂け目から、山のような魚影が2つ、
強引にねじ抜けた。都市の天蓋となるクラゲの皮膜を滑走路とし、
重力と速度を乗せた生きた砲弾となって、直下に林立する摩天楼へ突っ込む。
――ズズゥゥン!!
腹から地面に叩きつけられたその衝撃が、高層ビルの髄を波打つように貫通した。
サンゴと貝殻で組み上げられた優美な骨格は、万トン単位の重圧に耐えきれず、鞭のようにしなった末、構造の限界を迎えてへし折れる。
基部からの崩落。傾ぐ回廊を、サブノーティカたちが死に物狂いで泳ぐ。砕け散った窓という窓から、銀色の魚群が一斉に吐き出され、深海へと散っていく。
進路にあるすべてが削り取られた。装飾的な外壁は弾け飛び、生活の痕跡――家具や機材が、建物の内臓をぶちまけるように水中へ飛散する。
勢いを殺しきれぬ大魚はなおも地をえぐり、隣接するビルへと衝撃を伝播させ、ドミノのごとく区画一帯を圧潰していく。
逃げ惑う住人たちの背後で、すりつぶされたビルの残骸が、深海の空へと噴き上がった。
粉砕されたサンゴの粉塵とガラス片が、白濁した煙幕となって膨張し、蒼く透き通っていた都市の情景を、容赦のない濁りですべて塗りつぶした。
(鉛筆・・・というかモノクロでさなの目を描くのが思ったよりむずい)




