issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 05 10
岩肌に走る亀裂は、秒を刻むごとに深く、太く、その輪郭を苛烈に研ぎ澄ませていく。
逃げ場のないほど鮮明なそのディテールは、無機質な岩塊の連なりと、柔らかな光を宿すクラゲの都市群の衝突―― 避けることのできぬ終焉が目前に迫る事実を、ただ淡々と突きつけていた。
ホットショットは紅蓮の炎を噴き、海域を大きく旋回した。
しかし、いかなる方角へ翔けようとも、そびえ立つ褐色の絶壁は等しい速度で滑り寄ってくる。
どうやら海全体が大きな陸の環に捕らわれ、海底を削り取りながら、
水域の面積そのものを急速に塗り潰しているようだった。
ならば、その脅威を前に、抗う術など何も存在しないのではないか――。
「……かべぇ!?」
ホットショットの手の中で、ミーティスの絶叫が呪符を震わせた。白亜の広間もまた、世界がきしむ音と揺れに苛まれているのだ。
「多分大陸だ。大陸が、ここを締め付けるみたいに寄ってきてるんだよ!」
ホットショットは、迫りくる天変地異の壁を紅蓮の視界で睨み据える。このままでは、
ここにいる生命すべてが、惑星という名の万力に挟まれ、すり潰されて終わる。
「……どこだ、やるなら私たちとだけ戦えよ!」
彼女は海水を沸騰させながら吠え、血相を変えて身を翻した。
この理不尽な破壊の発生源へ――怒れる恒星の熱量を直接叩き込むべき標的を探す。
《会いに来るがいい。良き人よ》
オーシャンマンの思念が、ふたたびホットショットの感覚神経を撫でた。その響きは、
荒れ狂う潮流の彼方、海上のただ1点から降り注いでいる。ホットショットは迷いなく推力を臨界まで高め、導かれるままに直上へ翔け抜けた。




