issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 05 08
オーシャンマンの言葉が、唐突に切れる。
意志の伝達が消失した――その空白を埋めるように、最も粗暴な力学がこの深海を支配し始めた。
都市群を取り巻く海水が、上下、左右、前後――6方向から同時に殺到し、互いの流れを食い破るようにしてぶつかり合った。逃げ場をなくした水塊は極限まで圧迫され、生じた摩擦熱が大量の泡を吐き出した。
あたり一面が、白濁した帳に閉ざされていく。渦の回転はどこまでも加速し、
強大な遠心力がクラゲたちの柔らかな体をかき乱した。都市を包む透明な膜が悲鳴を上げ、
天然の素材で造られたビルが揺らぐ。居住区も街路も、その水の檻の中で、翻弄される小船のように揺れ動いた。
現象は、海流の乱れという域をとうに逸脱している。重圧と停滞が常であるはずの海底に、
惑星規模の暴風圏が円を描いて現出したのだ。
何兆tにも及ぶ泥土が海底から剥ぎ取られ、濁流の螺旋となって円環に取り込まれる。
その様は、木星に浮かぶ赤い大斑点を横から仰ぎ見る光景に似ていた。
「まずい!」
状況を察したストームジーが両腕を突き出すと、不可視の障壁へと転じた力の伝搬が、
都市群を抱く海域を直接叩いた。彼が操る天候の力場と、オーシャンマンの引き起こした奔放な激流が正面から衝突し、空間そのものが震動に悲鳴を上げる。
2つの破滅は互いを相殺することを選択しなかった。同調した波導と濁流は、苦悶に満ちたうごめきを保ったままさらなる高みへと加速し、より強大でありながら、内側へと向けられた破壊の矛先が、
その一定の境界を越えることのない、混然一体の領域を構築した。
かくして海中の暴風圏には、全方位から都市を押し潰さんとする圧力を、紙一重で押し留める「目」の領域が誕生した。しかし、この危うい均衡がいつ破綻を迎えるのか、それは誰にも予測がつかない。




