issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 05 06
さなが、恐怖に震える膝を両手で押さえつけ、1歩前へ泳ぎ出る。 小さな喉を震わせ、それでも、はっきりと惑星の意志へ語りかけた。
「ねぇ、オーシャンマン。……わたしたちのこと、気に入ってくれたんだよね? だったら……わたしたち、ここに残ります。地球には帰らない。ずっとあなたのそばにいて、お友達になってあげる」
《――なんと》
惑星の思考が、驚きにざわめく。
「でも……ひとつだけ、お願いがあります」
さなは涙目のまま、まっすぐに虚空を見上げた。
「サブノーティカの人たちも、一緒にいさせてあげてください。嫌なことがあったら私たちが全部聞くし、いつだって力になるから。でももしあなたが、この人たちらを『いらない』って切り捨てるなら……わたしたちも、あなたとは仲良くできません。友達をいじめる子とは、友達になれないから」
彼女たちが異邦人であることを理解するオーシャンマンは、それが並々ならぬ決断、言い換えれば、
あまりにもあっさりと行われる自己犠牲の宣言であることについてもまた、もれなく理解した。
《……しかし、それでも受け入れがたい》
重苦しい念波が、さなの全身を撫でるように取り巻く。
《そなたらは宝石だ。だが”これら”は泥だ。なぜ、宝石を手元に置くために、泥まで飲み込まねばならぬ?そなたらだけでよい。これらは排除する。それが最も美しい結論だ》
「違うよ。泥んこ遊びが楽しいのとおんなじだもん」
さなは、精一杯の強がりで言い返す。
「綺麗なだけの部屋なんて、寂しいだけだと思います。わたしひとりじゃ、
どんなに頑張っても『ひとりぼっちの音』しか鳴らせない。……今の、あなたといっしょで。
私たちの生活があなたにとって心地よかったのは、やっぱり、ひとりっきりが嫌だったからなんじゃないですか?」
《――っ》
痛いところを突かれた巨人が、わずかに揺らぐ。 純粋性を求めるがゆえの孤独。それを、最もか弱い少女に見透かされた瞬間だった。
「さな、行け行け!もっとこう、上目遣いにしろ!瞳をうるませて、あざとく攻めるんだよ!」
その最中も、アシュリーは背後から小声で檄を飛ばし、
「ここ海の中だよ? 涙なんて溜められないって」
そこにはちるは、物理的事実を真顔で突きつける。
「……とにかく!ウチからもアシュリーからもお願いします!」
そして、はちるとアシュリーもまた、さなに同調して身を乗り出した。3人の少女が揃って、全身全霊で訴えかける。




