issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 05 05
天地の揺らぎが強まり、彼の意志があきらかに武力に転化しようとする一瞬、
「待って!じゃあ、私たちからもお願いするよ。このサブノーティカたちがここで生きていくことを許してくれないかな?」
おせちは、斜め上に向かって叫んだ。
海の全体が、いちど、底のほうからごろりとうねり、
水そのものが不満げに息を吐いたかと思うほどの鳴動が広間を――いや、七つの海を満たした。
「君が、“意志”を持つ前から、彼らという種族はもうこの星にいたんだ。君より、ここにはずっと長く住んでるんだよ。その理屈は、分かるよね?故郷なんだよ、彼らにとっては君の体そのものが。
それを丸ごと奪うのは、あんまりじゃないか」
おせちは、胸の奥に浮かんだ真心からの言葉を取り落とさないように、集中に集中をかさね、次のセリフを紡いでいく。
「この人たちは、君を蝕む病原体なんかじゃない。
私たち人間だって、身体の上にはたくさん微生物を乗せて生きているけど、それを全部、滅ぼしたいとは思わない。『共生』してるからね。役に立つ子たちも、そうでない子たちも含めてさ。
君はいま、こうして意志を持って、自分の意見を誰かに話せる。だったらなおさら、
彼らと折り合いをつけて生きてく道も、簡単に選べるはずだよ。
君がこの星であるように、サブノーティカにとってもここは『生まれた場所』なんだからさ、なんとかしてやってくれないかな?」
彼女の必死の抗弁に対し、惑星アブズから返ってきた波動は、理屈の応酬ではなかった。
ただひとつの、揺るがぬ拒絶の意志である。
《我は、そやつら――そなたたち4人以外の、すべての者どもの心のありようが気に入らぬ――》
《――そやつらの内には、我が知らぬ欲望と欺きが渦を巻いている。
そなたたちが奏でた調和とは異なる、耳障りな乱れだ――》
《――我が身体に、その乱れは受け入れられぬ。
そなたたちの言う『共生』とやらは、我にとっては毒にも等しい。
……結論を告げる。
そなたたち4人との共存であれば、我は喜んで受け入れよう》
言葉の切れ目ごとに、海の轟きは寄せて返し、この星の、底すら知れぬ海底の岩盤が人知れずざわめいた。そこに込められた頑なさは、文言以上にはっきりとした輪郭を持っておせちの胸を締めつける。
この星は、理屈で折れる気はない――そう理解した瞬間、おせちは喉の奥に浮かびかけた次の言葉を、
もっと剥き出しの心から発せられる、清らかなものに切り替えるしかなかった。
――が、その直前。




