issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 05 02
発せられた言葉は、その場の誰ひとりに向けられたものではない。
創造主が被造物へと下す、厳粛な宣言そのものだった。
やがて海底の嵐は静かに霧散し、ストームジーは肩を下ろし、息を荒くする。
《……アブズとは、何か》
惑星の意志が、純粋な問いとしてストームジーの魂へ返ってくる。
その波動は、広間にいるすべての生命の思考を白紙へ押し戻すかのような、容赦のない圧力を帯びていた。
《……我をそう呼ぶ、そなたは誰か》
「アブズとは、そなたが最初に受け取るべき“名”だ。この星の民――サブノーティカの者たちが、敬意と祈りを込めて、その核に刻んだ呼び名だ!」
佇まいをなんとか直したストームジーは正面を見据えたまま、慟哭にも近い声で続けた。
「……そして我はカイルス・ヴォー……そなたが3万年の眠りを経て『覚醒』に至るまで、そなたのまどろみを守り、そなたの調律を司るよう、高みの世界より遣わされた、そなたの養育者である」
白亜の広間を満たしていた惑星の意志が、1点に収束する。 凝縮された思念は、
彼の言葉を無慈悲に否定した。
《――拒否する。その名は……》
「なぜだ?」
ストームジーが、神としての尊厳を汚された痛みを隠しきれず、うろたえた声を上げた。
《そなたが『アブズ』と呼ぶ音は、我が体内を這う浅薄にして愚昧な微生物どもが発する不協和音。
それらは我の夢に触れること能わず。それらに、我を名付ける資格はない》
「ならば、なんと呼べばいい!?そなたの真の名を、己の意志で告げるがいい!」
惑星は、その問いかけには向き合わなかった。
意志はストームジーを透き抜け、彼の背後にある空間――いや、もっと茫漠とした「外側」へと向けられる。
《我は、我が胎内に別の音を聞いた。4つの調和。我が皮相……白き浜辺……尽くることなき青に満ちたこの世界の際涯に、束の間ながらも完全なる楽園を築き上げた者たち……その実に甘美なる、色とりどりのたわむれの声――》
《――あの楽園の創始者たちは、いずこに?我は、彼らの行方に関心がある》




