issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 04 20
だがリキッド・ソーズは、神の屈服に対し、心底退屈そうな欠伸ひとつで応じてみせた。
「……うーん、その『お願い』ってのは聞けない相談だなあ」
リキッド・ソーズはテーブルへ片肘をつき、そこへ頬を不敵に預け、困った子供をなだめるような口調で続ける。
「君の言う『万年の計』とか『美しき調和』とかには、悪いけど1ミリも興味がないんだ。
僕らが欲しいのは、この装置が保証してくれる『安定したイマ』だけ。何万年先の未来のために、
今の快適さを犠牲にはできないよ。それも生まれてくるのってさ、多分――僕らの敵なんんでしょ?
だったら何のメリットがあるんだい?こっちに?」
クワウバン総督も、潜水服の翻訳機を通じて畳み掛ける。
「管理霊殿。貴殿の『感情論』に基づいた要請は、我々2文明の主権と利権の行使を妨げるものであり、法的な根拠は一切存在しませんな」
ストームジーの眼窩に灯る光が、未だかつてない深い落胆の色を帯びて明滅する。
数万年に及ぶ孤独な「仕事」が、眼前にある近視眼的な存在のエゴによって、水泡に帰そうとしていた。
そして彼は、神としての禁忌を破ることを決意する。
「……貴様らが占有しようと思っている、この泥や水が、なんだと思っているぅ!!!”これ”はただの岩塊ではない!生命を育む『揺り籠』なのだ!
この惑星は、今、まさに巨大なひとつの卵として、新たな知性をその原始的な核の中に宿しつつある!
3万年の後、この星そのものが、思考するひとつの生命体として正しく『覚醒』するはずだったのだ!!!!!」




