issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 04 19
おせちが沈黙したことで、この白亜の広間における5人の立場は確定した。
結局のところ、彼女たちは交渉相手ですらなかったのだ。
クワウバンとサブノーティカが「友好」という実利を確定させたこの祝賀の席で、「第1発見」や「摂理」といった彼女たちの主張は、すでに何の意味も持たない。自分たちのハッタリはすべて見抜かれ、
政治的にかくも無価値な存在であるという現実を、5人はただ、先の論争で、
場をかき乱したことの報復のようにしてあらためて突きつけられた。
あるいはこの祝賀の席自体、自分たちを嘲笑するために設えられた舞台装置だったのではないか?
勝者の栄光を傍観させ、絶望を味合わせるための余興の、演者として都合よく呼び出されたに過ぎないのではないか。そんな屈辱的な疑念が、5人の思考を侵食していく。
逃げ場のない閉塞感が場を支配する中、それまで石像のごとく押し黙っていたストームジーが席を立つ。
彼はリキッド・ソーズの前へ進み出た。
「……待ってくれ、リキッド・ソーズ大提督」
発せられた声からかつての威厳は失われ、切実な響きだけが残る。 彼は交渉相手へ向かい、ゆっくりと頭を垂れた。
「君たちがクワウバンと手を組むことも、私の『万年の計』を拒絶することも、もう受け入れよう。
しかし、頼む。その気象装置の使用だけはやめてくれ。
これは、この星の調律そのものを破壊する。私の『計』がどうなろうと構わない。
しかしながら、此度の計画によって生まれてくる命だけは、扱いを間違えれば、本当に取り返しのつかないことになる。あえて言葉を濁さず言えば、その命に関しては、”最善の状態で生まれられないのなら、いっそ生まれぬ方が良い”。
彼の魂が無事に生まれ直す機会なら、それは霊界の方でいくらでも用意できる。
だが、装置を使い続ければ、この星は非常に不健全な形でその命を生み出すことになる。
そうなれば、君たちの文明も、本来あり得たはずの美しき調和の世界も、すべてが失われる!お願いだ、それだけは……!」
ストームジーの懇願は、白亜の広間へ痛切に響き渡る。




