issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 04 14
おせちは畳み掛ける。
「クワウバンの、あなた方に対してあまりにも譲歩しすぎた態度が、まさにその証左です。
クワウバンの真意は、ゴチェヌコイを利用したあなた方の完全排除に他なりません。
彼らは当初、私たち地球人に対して同様の『処理』を画策していました。ゴチェヌコイをけしかけて先住民を浄化させ、更地となった星の利権を山分けにするのです――」
「――『ホストとゲスト』なんていう配慮のいる関係よりも、侵略者同士で完全に利権を折半する方が、彼らにはずっとお得なわけですから。
厄介な原住民を消す汚れ仕事をゴチェヌコイへ押し付け、恩まで売れる――彼らにとっては一石二鳥のビジネスチャンスというわけです。今回の調印式は、サブノーティカのみなさんを油断させるためのカモフラージュか時間稼ぎに過ぎません」
「……ほう?」
リキッド・ソーズは、おせちが突きつけた『クワウバンによる浄化加担』という告発を前にしても、笑みを崩そうとしない。
「面白い作り話だ。クワウバンが、僕らを消そうとしてる、と?」
「はい。断言します」
放った切り札が相手の急所を穿ったと確信し、おせちは、肉を噛み切るように言い切った。
しかしリキッド・ソーズは、大げさに腕を組み直し、彼女の顔を、楽しそうに覗き込む。
「……なんてね!実はその話、僕らももう知ってるんだ」
「――え?」
おせちの表情が、にわかに凍りついた。
「……いやあ、ゴチェヌコイってのは本当に厄介な連中らしいね。クワウバンとの最初の交渉で、そういう悪いエイリアンがいるってこと教えてもらったのさ」
リキッド・ソーズは、バックステージの暗闇に浮かぶ都市の光を見つめる。
「クワウバンは、君たち地球を除外した交渉を僕らと行うためにまず2つの条件を提示してきた。まあ遊園地のファストパスみたいなもんだよね?
1つは、僕らを星間条約に加盟させることの即時保証。んでもひとつは……ゴチェヌコイ連合に対する、
クワウバン艦隊による個別的・恒久的な安全保障条約の確立――」
リキッド・ソーズは、再びおせちに視線を戻す。
「君の言う『手付金』にしては、ずいぶん手厚いと思わないかい? 彼らは、僕らを『盾』にするどころか、自分たちが『盾』になると申し出てくれたんだよ」
おせちの思考が、ついに停止した。




