issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 04 11
宮殿の基部が迫るにつれ、4人はその威容に呑まれていく。巨大生物の肋骨を組み上げた大軒下は、
何100m先まで続いていた。広大なエントランスホール、および接続する大階段には、
おびただしい数の魚人が行き交い、濃密な雑踏を形成している。
一行が搭乗したのと同種――ゼリー状表皮を持つ生体ビークルが、中空に何10と浮遊し、定められた軌道で乗降場へ誘導されていく。
降り立つのは、あからさまに地位の高さを示す魚人たちだ。 光る鉱石や真珠で編まれた装飾を纏い、
屈強な護衛を従えてホール奥へ消えていく。
4人を乗せた個体は無音で列へ合流し、巨骨柱の陰にある着水場へ降下した。硬質の床を踏んだ瞬間、おせちは異変を察知する。
大ホールから漏れ聞こえるのは、緊迫した議論の空気などではなく、祝祭を彩る貝楽器の高揚した音色に他ならない。ホールを目指す魚人たちの装いは、交渉団というよりは、明らかに賓客としてのきらびやかさを放っていた。
「……ちょっと待て、なんでこんなパーティーみたいなんだ?今日はまだ話し合いだろ」
アシュリーが、場違いな雰囲気へ低い声で毒づく。吐き捨てられた悪い予感は、おせちの脳内で最悪の確信へと変貌した。
(間に合わなかった――!)
「……案内はいいです!」
おせちは先導役を手で制し、大ホールへ向けて泳ぎ出す。アシュリーたち3人も、ただならぬ気配を察して即座に追従した。
壮麗な大ホールへ飛び込んだ4人は、息を呑んで硬直する。何100というサブノーティカの要人が見守る広間の中央。大提督リキッド・ソーズが、皮膚を持たぬ異形のクワウバン総督ゼ=ラクス・ヴァルと、
固い握手を交わす瞬間だった。




