issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 04 10
あくる日、ホテルの窓に直付けされた長大な影。5人に用意された移動手段は、
船とも車とも呼べぬ代物だった。つまり、ゼリー状の表皮を持つこと、そしてエラから後ろの体が存在しないこと以外、どこまでもオオカミウオに似た巨大な生き物だったのだ。
5人は、その頭部の内側たる座席へ乗り込むよう指示された。アシュリーは「マジかよ」と声を上げたが、おせちに促され、慣れぬ粘膜質の床へ渋々足を踏み入れる。
頭だけの怪魚が、尾部から泡を立てて動きだす。それは「駆動」というべき動きだった。
5人は、クラゲのドーム内部、水で満たされた広大な「空」へと進み出た。
眼下には、光かがやく都市が広がっている。建造物群は、どれも何100、何1000という大貝の殻や、未知の巨獣の骨を継ぎ接ぎして構築されていた。
信じがたい高さにまで積み上げられた石灰質の宝塔たち――それらは、地球の建築様式とはまったく理念を異にし、すべてが毒々しいまでの極彩色に彩られている。
青緑の螺旋、紅珊瑚の尖塔、紫と橙が交錯する骨組みの回廊。光はそれらひとつひとつから滲み出し、
青黒い水中に溶け、街全体を夢幻の幸福感で包み込んでいた。
景観に編み込まれる超大型の海藻は、街路樹というより、その規模の大きさによって建物の纏う衣に見えた。深緑の葉が建造物の輪郭に沿って揺れ、時折、微細な気泡を放ちながら、まるで都市そのものが呼吸しているかのような錯覚をそこに生む。
ここが水中で、魚人たちが泳げる存在である以上、街に道路という概念はない。彼らは、プランクトンの燐光と屹立する建造物のシルエットに満ちたこの複雑な海中を、あまりにも躍動的な姿で駆け回っている。
都市クラゲが本来持つ生体組織が、発光する神経網として壁面を脈打ち、都市全体へと、
物事の総括のようにして不思議な輝きを与えていた。
青白い光の筋は、まるで血脈のように建物から建物へと伝わり、律動するたびに街の表情が変わる。
5人が乗る生物は、宮殿へ向かう他の魚類の船団とともに、輝くインフラの間を音もなく進んでいく。
周囲を泳ぐ船団もまた発光し、それらが列をなして進む様は、星々が軌道を描くようだった。
目的地は、中央にそびえる、一際大きな、螺旋状の骨で築かれた壮麗な宮殿だった。




