issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 04 09
「たしかに、私もその事実には驚かされた。……しかし、それは違うのだ、アシュリー」
彼は、そう否定する。
「どうしてそう言えるんだい?」
おせちが、アシュリーの疑問を引き継いで問うた。
「状況証拠から言うと、彼らサブノーティカに関する知識は、物質界におもむく際――つまりはこの低次世界への適応によって欠落したものにすぎない。一方で、私が霊界で仰せつかった使命、『設計図』に描かれている生命の完成図は、彼らの姿とは完全に別のものなのだ」
ストームジーが明かした内容は、4人に新たな動揺をもたらした。
「それってさ、どんなの?」
はちるが純粋な好奇心に駆られ、身を乗り出して問う。
対して、ストームジーは緩慢にかぶりを振った。
瞳から先刻までの困惑や焦燥は消え失せ、絶対的な「神」としての無機質な光だけが戻っている。
「悪いが、私の権能において、絶対に明かすことができない」
変貌した姿のまま断言するストームジーへ、アシュリーが我慢ならぬ様子で口を挟んだ。
「ずいぶん融通がきかないな、お前のいる『霊界』ってのは。そんなガチガチのルールで、よく今までやってこれたもんだ」
放たれた皮肉は、骨組みの壁に吸収されて消える。 嵐の神は応じない。 ただ4人の少女を1人ずつ順に見つめ、やがて深く息を吐き出した。
「……すまない」
発せられた声には、疲労と焦燥が滲む。 ある程度年齢を重ねた者ならば――およそ人類の誰もが聞き覚えのある、中間管理職の哀愁に近い響きだった。
「君たちを私の都合に、そしてこの星の厄介事に巻き込んでいることは理解している。だが、もう1度だけ、私を信じてついてきてほしいのだ。あらためて、よろしく頼む」
ストームジーは、ゆっくりと、深く頭を下げる。その優雅な所作は、以前に火山島で見せた「懇願」とは異なり、仲間に対する誠実な「依頼」の形を成していた。
アシュリーは呆れたようにかぶりを振り、さなとはちるは顔を上げさせようと慌てふためく。
おせちは、肩に手を置く2人と、それでも真摯に頭を下げ続ける神を瞥見し、この不可解な存在と再び行動を共にすることを選んだ。




