issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 04 08
しばらくあって……。
はちるは、女体になったストームジーに対抗するかのように人間の姿を取ってみせ、
「次やったら問答無用で逮捕だからな!プライバシーの侵害だぞ」
アシュリーは、ストームジーの肩を肘でねちっこく突いている。
「――静かにして!」
おせちが、その茶番を一括で制した。焦燥感からか彼女は、やれやれと額を押さえながら、ストームジーの方を見る。
「ストームジー、状況はわかってるの? サブノーティカとクワウバンが、私たち抜きで手を組むのが1番まずい。それを防ぎたいんだけど」
「ああ――」
ストームジーは、ざらつくところのない女声を発して、その顔をわずかに曇らせる。
「君の焦りはもちろん私の焦りでもある。とはいえ、こうなってしまった以上、下手な動きはできまい。
案内人が言った『クワウバンが集まってから』という機会を、素直に活かすしかないだろう……」
「でも、それじゃ手遅れになるかも!」
「会議の動向も重要だ。ただ、私の方でそれ以上に気になっているのは、彼らが気象を操る手段だ」
ストームジーは、長い長いアームスカーフを部屋の水流に漂させながら、貝殻で装飾された壁に触れ、そのままそっと目を伏せる。
「――それこそは正真正銘のアノマリーだ。どんな装置かは知らないが、それは直接的に霊界の『計』に予測不可能な影響をもたらす。私の権能さえ受け付けなかった。……交渉の席では、最優先課題として使用の抑制を求めなければならない」
「でもさあ――」
ここでアシュリーが、2人の緊迫したやり取りに、もっとも根本的な疑問を割り込ませた。
彼女は、他の3人とは違い、この神の存在意義そのものを問うていた。
「そもそもの話だぞ?この星には、サブノーティカっていう知的生命体がもういたんだ。
だったら、お前の『知的生命の土壌を作る』っていう仕事は、もう終わりなんじゃないか?」
それは、この上なくもっともな問いかけだったからこそ、会話の流れをせき止めるのに十分な言霊を持った。さなとはちるも、熱帯魚を追うのをやめ、アシュリーとストームジーを交互に見る。
おせちも、戦略以前の問題を指摘され、息を呑んだ。
ストームジーは、アシュリーを見つめ直した。彼が纏うようになった滑らかな身体の輪郭が、
ゆっくりと動く。




