issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 04 07
おせちが戦略の再構築に思考を沈ませている、その後ろ。
「……あ、見て!入ってきた!」
さなの華やいだ声がした。
見ると、開け放しの窓から、色鮮やかな数匹の熱帯魚が室内に迷い込んできている。
さなは念動力で作った泡の数々と、魚たちを心地よさそうに戯れさせ、はちるはその内の1番大きな1尾へと無邪気にも指を伸ばし、アシュリーは「全然綺麗に見えるけど、あいつらからしたら虫が入ってくるような感じなのかな?」と率直な感想を述べている。
おせちは、3人の呑気なやり取りを一瞥し、
扉の向こうで、自分たちの運命が勝手に決定づけられようとしているこの瞬間に対し、
たまらず重い息を泡として吐いた。
「……ここだったか?ようやく見つけたぞ」
その声は、部屋のど真ん中にいきなり響いた。おせちが顔を上げると、
ストームジーが、まるで低い段差から飛び降りた直後のように、わずかに膝を曲げた姿勢で、音もなく出現している。
「「「「わっっ!?」」」」
熱帯魚と戯れていた水球が、さなの驚きで連鎖的に弾け、魚群が、部屋中に花びらのごとく散華する。
「……あっ!おさかなさんが!」
はちるが慌ててそれを追いかけようとする横で、アシュリーは即座にストームジーへと向き直り、露骨な拒否感を顔に浮かべた。
「ちょっとお前ノックもなしに……デリカシーってモンがないのかよ!ここは乙女の部屋だぞ!?着替え中だったらどうすんだよ!」
「何を言う、霊体に性別はない――」
ストームジーは、その艶のある低い男声で、恥ずかしげもなく続けた。
「だから、この場にいる間は、私も乙女ということにしてくれ」
言い終えるが早いか、ストームジーの身体の輪郭が音もなくそよいだ。筋肉質な体躯が内側から溶け、
波打つように再構成されていく。1秒も経たぬうちに、ありあまるほどの曲線を持つ、妖艶な女体へと完全に変貌していた。
そのあまりにも強引な返答、そして適応の手段に、アシュリーが言葉を失う。だが今度はさなと、魚にことごとく逃げられていつの間にか部屋の中空――そこで、ストームジーの方を振り向いたはちるが、
彼の最初に発した言葉、その尻を捉えて声を揃えた。
「『ここだったか』って――もしかして」
「……いろんな部屋でこんなことしてきたんだ!!」




