issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 04 04
やがて彼らは、カルテット・マジコとストームジーの眼前へ到達した。
大軍勢が深海の只中で展開するのは、天から地へ続く完璧な長方形の陣。 槍先の燐光、戦闘艇の駆動音、そして兵士たちの敵意に満ちた瞳。一触即発の気配が、水圧と共に5人を圧迫していく。
アシュリーが身に炎を宿しかけた、刹那。
軍勢の中央から、リキッド・ソーズがすっと優雅に泳ぎ出る。彼は余裕の面持ちで両手を上げてみせた。
「――やあやあ、侵入者の皆さん!僕たちは、和平を申し出る」
発せられた一言に、部下たちを含めた全員が虚をつかれる。
リキッド・ソーズは周囲の困惑を肴にする様子で、あっけらかんと言い放った。
「だって、考えてもみてよ?僕らが仕掛けた気象兵器の嵐、あれダメだったでしょ?けしかけた可愛いお魚ちゃんも、逆にビビらされちゃったみたいだし?これ以上やったって、お互い無駄じゃないかなァ。だからさ――仲直り、しようぜ?」
*
リキッド・ソーズの常軌を逸した提案に、まず異を唱えたのはホットショットだ。
全身から怒りの熱が立ち昇り、周囲の海水にまで干渉を始める。
「へぇ。つまり、こっちが一方的に勝ってる状況を、わざわざ『引き分け』にしてくれって?……なぁ、そっちの常識じゃ、それは何か高尚なボランティアにでもなるのか?」
飛びかからんばかりの勢いを、リキッド・ソーズは陶酔すら滲ませた表情で受け流す。
「おっと、怖い顔。でも『そっちが一方的に勝ってる』か……うーん、あながち、そういうわけでもないんだな、これが。まあ、ちょっと見ててよ」
彼は芝居がかった仕草で、隣に控える側近へウィンクを飛ばす。 心得た側近が懐から取り出したのは、磨かれた皿状の装置。
5人の足元へ滑るように投じられたそれは中空で淡い光を放ち、ゆらりと立体映像を結実させた。
映し出されたのは――皮膚を持たぬ、おぞましきクワウバンのあの威容。カルテット・マジコも見覚えのある、ヴァル総督その人である。




