issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 04 02
交渉の余地など存在しない。 魚人の代表と思しき1人が、三叉槍の穂先をわずかに振る。
開戦の合図だ。言葉など不要。 直後、包囲網を敷く槍の先端から、幾条もの青白い光弾が放たれ、
深海の闇を切り裂いて殺到した。
「……散開!」
イムノの号令一下、4人は四方へ飛ぶ。だが敵の機動は想像を絶していた。
魚人たちは周囲へ自在に水のトンネルを形成し、その推進力に乗って3次元空間を縦横無尽に滑走する。
驚異的な俊敏さは、深海というハンデを背負う彼女たちと完全に拮抗していた。
槍から放たれる無数の光弾をかいくぐり、ホットショットが炎弾を撃ち返すがが、魚人たちは最小限の挙動で回避を成功させる。スヌープキャットが力任せに突貫しても、巧みな水流操作によって軌道を逸らされ、拳は虚空を打つばかり。イムノのガンブレードが、肉薄した1人の槍と激しく火花を散らす。
その一瞬の攻防ですら、敵は驚異的な体捌きで距離を取り、再び水流に乗って陣形を立て直してみせた。
彼らは泡や白濁した水流の道を意のままに形成し、水そのものと一体化した挙動で深海を駆ける。
超人である彼女たちの反応速度に勝るとも劣らぬ機動性。
猛攻を呪符の結界で防ぐ最中、ミーティスの脳裏に確信が閃く。
「みんな、気をつけて!この人たち魔法が使えるみたい!水圧を感じないの、水を味方にできるから……!」
緊迫した警告が全員に届く。彼女たちが単純なフィジカルでこの極限環境へ無理やり適応しているのに対し、魚人たちは深海という環境自体を支配下に置いているのだ。
「――こまめにパス回しやがって!ウチの前プレなめんなよ!」
ホットショットの苛立ちが臨界を突破する。 彼女は個々の標的を追うことをやめ、再度、全身を高密度の発光体へと変貌させる。
今度は目くらましなどではない。凝縮された熱エネルギーは爆発的な衝撃波と化し、全方位へ拡散され、魚人たちの陣形を内側から食い破る。
生じた一瞬の混乱を、イムノは見逃さない。 ガンブレードに雷光を纏わせ、薙ぎ払った一閃が、敵の水流軌道を物理的に断ち切った。数体の魚人が回避不能の電撃に焼かれ、苦悶の表情を浮かべる。
勝敗は決した。 地力の差が、戦術と地の利をねじ伏せたのだ。
魚人たちは初めて統率を乱し、一斉に踵を返してクラゲ都市の入り口へ撤退を開始する。




