issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 03 41
「――ここだっ!」
深海の闇が、ふたたび昼のごとく焼き上がる。イムノがガンブレードを構え、装填された「雷のソイル」を解き放つ。銃身から迸った青白い稲光は渦を巻き、射手の全身へと逆流した。筋肉の繊維1本1本にまで閃光が宿り、人と武器の境界が溶解していく。
轟音とともに、雷の斬閃が水を裂いた。スカウカフの左舷、頭部から尾の付け根に至るラインが、
一直線の閃光によって両断される。刃先の接触点から黒曜石の鱗が爆ぜ、
青い雷火が肉の芽色を貫通すれば、真皮の中の、ピンク色をした血管層が蒸気をあげて押し広げられていく。
斬撃は魚体を縦貫する長大な光刃と化し、反対側の海中へ一直線に抜けていく。
軌跡は千切れた光の線となってほつれ、やがて火花のごとく弾けて消え去った。攻撃の完了を告げる合図である。
そして1拍の間―― 刻まれた長大な傷口から、この星の生命の血が、黒煙のごとき勢いで噴出した。
巨躯が苦痛に反応する、その0.1秒の隙さえ与えない。
いつの間にか、全身を覆う鱗の隙間という隙間を埋め尽くすように、ミーティスの呪符が無数に貼り付いていた。
「……おりゃあああああああっ!」
全力を振り絞ってなお、か細い少女の気合いが、起爆の合図となる。 貼り付いた呪符が一斉に白光を放ち、数万の爆炎がスカウカフの巨躯を食い破った。凄まじい規模の連鎖爆発は、全身を火口と化した噴火のごとき光景を描き出す。
重なり合う衝撃波は、水中で沸騰する無数の気泡を生み出し、黒曜石の強固な鱗を粉々に砕き割る。皮下の肉組織は抉り取られ、怪物の威容は、剥き出しの薄桃色をした真皮と、残存した黒い表皮が入り混じる、無惨な斑模様へと変わり果てた。ちょうど、中途半端に鱗引きをされた魚のように。
そして、とどめ。
「――にゃあああああああああっ!」
爆炎と血煙、沸騰する水泡の渦を突き破り、スヌープキャットが出現した。 彼女の小さな拳に、凝縮された純粋な運動エネルギーが収束している。
――ゴゥッッ!!!
拳はスカウカフの顔面へ深々とめり込み、頭蓋を内側から粉砕する。
山よりも大きな頭部は脊椎からあらぬ方向へ折れ曲がり、発生した余波が深海の全域を揺さぶった。
眼光を失った体は、ただの肉塊へと堕し、ゆっくりと、しかし確実に自重に引かれて沈降を開始する。
やがて亡骸は、底無き奈落の闇へ、吸い込まれるように消えていった。




