issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 03 38
ストームジーは深海の王者たちが向ける視線になど頓着せず、ただ1点――さらなる深層で明滅する光の群れを見据えている。かつて海岸から観測された“貪婪な眼光”。 待ち受けるのは確実に未知の存在だ。
「まだ、この深度でもないようだな……」
ストームジーの声が、水圧をものともせず朗々と響く。音波は液体の壁を透過し、地上と変わらぬ鮮明さで少女たちの鼓膜を打った。4人の胸中を走る恐怖は、理性と意志の刃によって抑え込まれる。
……逃走ではない。この深淵の底で、未知と対峙するために進んでいるのだという自覚が、
彼女たちを突き動かす。
少女たちの張り詰めた緊張を、ストームジーは背中で感じ取っていた。
実のところ、深海の支配者たちが抱く荒ぶる感情を穏やかな潮流へと変換しているのは、
彼自身の力に他ならない。しかし、原初の魂へと直接語りかけることで維持されるこの安定は、
あまりに脆い均衡の上に成り立っていた。
「……恐れるな。奴らの敵意は、私が鎮めている」
ストームジーの声が、気泡の連なりとなって水中を伝播する。
「この星の生命は、私の声に耳を傾ける。私の意志は、嵐さえも服従させる。だが――」
「さっき服従できてなかっただろ!」
アシュリーの鋭いツッコミが突き刺さるが、神は応じない。 淡い発光の中、ストームジーの瞳孔がわずかに収縮した。
「――あれは、最近頻発している未知の事象だ。私はてっきり、クワウバンが引き起こしているのだと疑っていたが……」
一瞬、彼の声に、鋼を擦り合わせるような警戒の響きが混じる。
「――だが、この支配には唯一の例外が存在する。魂そのものが荒れ狂う嵐であり、
私の声が決して届かぬ古き王。ただ1体――その名を、スカウカフという」
「――奴は、こうした日にのみ深層へ姿を現す。この海洋惑星の、さらに底無き奈落からな。
災害が交錯し、巨魚たちが長大な帯を形成する刻……星の頂点捕食者すらも糧とする上位存在として、
最適な条件を見計らって浮上してくるのだ。ここに留まれば、接触の危険性は秒ごとに跳ね上がる」
忌まわしき名が海中に溶けた刹那、深層のさらに下――重力の底に沈む深淵が、
物理的な応答を返した。
(変身途中のイメージについて、ポン出しの割には中々いいのが出力できたのでペタリ)




