issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 03 34
そこに鳴り響いた音――。
「……?」
ストームジーの眼窩に灯る光が、不整脈のように激しく点滅した。
説明のつかぬ引力に胸の奥を掴まれて、彼はゆるやかに顔を上げる。 曇天の彼方、
2つの太陽の輪郭がわずかに歪み、空がノイズを帯びたようにざらついた。
「な、なんだ!?」
アシュリーが息を呑む。
ゴゴゴゴゴ……!
その声を飲み込むように、重く大地が鳴動した。 地の底で何かが目を覚まし、山頂の岩盤が内側からの圧力に耐えかね、無数の裂け目を走らせる、そこからオーロラのごとく赤光が一斉に立ちのぼった。
立ち昇る噴煙は、悠久の自然が見せる営みとは対極の、あまりに性急な殺意に満ちていた。
引き金を引かれた散弾のごとく、山頂は内圧によって木っ端微塵に弾け飛ぶ。
撒き散らされた灼熱の岩塊が描く紅い弾道と、爆発的に膨張する火山灰の傘は、またたく間に成層圏を侵略し、空の青を暴力的に塗り潰していく。黒煙と赤光が混濁し、太陽の輝きを遮断した絶対的な影だけが、天頂に君臨していた。
初速に乗り遅れたマグマは、濁った波頭と化して山肌を雪崩れ落ちる。 押し寄せる熱量は大気を物理的に揺さぶり、視界の輪郭を陽炎の向こうへ歪ませた。惑星自体が激越な怒りを解き放ったかのような、荒々しい天地創造の光景がそこに展開する。
砕かれた岩盤が全方位へ弾け飛ぶ最中、4人は反射的に退避行動へと移っていた。
おせちは飛来する岩塊を踏み台に、空中へさらに高く跳躍する。ガンブレードから紫電が迸り、
瞬くの間に遠く離れた岸辺の岩場へと転移すると、雷撃の余韻をブレーキとして着地を決める。
アシュリーは紅蓮の炎を爆発させ、膨張するエネルギーを推進力へと変換した。降り注ぐ岩石の豪雨を縫うように飛翔し、空中の1点に急制動をかけると、ようやく噴煙の源へと眼差しを向ける。
さなは呪符を瞬時に展開し、紫色の霊的障壁で全身を包み込む。
爆風の圧力をいなして減速し、綿毛のような軽やかさで別の岩棚へと音もなく降り立った。
はちるは強靭な肉体で爆圧を正面から受け止め、きりもみ回転で運動エネルギーを殺す。
山麓の垂直な岩壁に落下しつつ、四肢の鉤爪を深々と突き立て、火花を散らしながら強引に制動をかけた。
地球屈指の超人である彼女たちにとって、今回の衝撃はダメージと呼ぶに値せず、感じたのは、単なる不意打ちの驚きにすぎない。だが、4人の表情から笑みは消え失せ、眼前に広がる異常事態へ、険しい視線だけが注がれていた。
4人が散開した岩場で、噴き出すマグマの赤黒い光が、彼女たちの体表を不規則に照らし出す。
仰ぎ見る空には、異様な光景が広がっていた。 間欠的に噴き出し続ける火山弾の奥、
高層の大気では極彩色のカーテンが一気に翼を広げ、幾何学的な模様を描きながら燦めき出す。
エネルギーの幕は周囲の空間を歪ませ、重低音の唸りを響かせながら、島の全域へ向けてゆっくりと羽を降ろし始めていた。




