issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 03 33
……クワウバンとの会談を終え、カルテット・マジコとストームジーは、
火山の山頂の簡素な掘っ立て小屋へ戻ってきた。双子の太陽はすでに傾きはじめ、
空は紫と橙の層を重ねた夕暮れ色に染まりつつある。昼の灼熱がどこかへ退き、
赤茶けた山肌を涼風がすべり降りていく。
はちるとさなが岩に腰掛ける一方、アシュリーは小屋の屋根にあるドーマーの縁を足場に選んでいた。 窓枠へ爪先を引っかけ、膝を高く抱えるような姿勢で座り込む。
高さの違う3人の視線は、沈みゆく光景の彼方へと同じ角度で吸い込まれていた。
おせちは、岩に置いたままで風にさらされっぱなしになっていた資料をあらためて手に取った。
その紙の束は、彼女の胸中で渦巻く複雑な感情を映すかのように、落ち着きなく揺れている。
「……いや、負けたね」
口先三寸で終わらせるはずだった交渉は、結局、ストームジーの自己犠牲によって幕を引いた。
勝利には程遠い、忸怩たる結末。彼女の思考は、出口のない問いの迷路を、なおもさまよい続けていた。
その背後から、冷えたヤシの実ジュースを手にしたストームジーが、音も立てずに歩み寄る。
彼は実のひとつをおせちに手渡し、傾きかけた太陽へ顔を向けて、軽く笑う調子で言った。
「ああ、大負けだな」
その声には、非難の色は全くない。むしろ、どこか吹っ切れたような、清々しささえ宿っていた。
彼はおせちの隣に腰を落ち着け、ヤシの実を傾けて一息に喉へ流し込んだ。
おせちは、ヤシの実を握りしめ、ストームジーの顔をまっすぐに見据えた。
「……地球とクワウバンの共同統治についての話し合いなんだけどさ……その交渉は、本当に地球の専門家に任せようと思う。君の意志はなるべくちゃんと伝えるようにするからさ」
彼女の言葉に、ストームジーは静かに頷いた。
「たしか、お前たちは『学生』という立場なのだったか?……ああ、もちろんだ。お前たちにこれ以上無理を言うわけにはいかない。むしろ、ここまで信じて私に付き合ってくれてありがとう。本当に感謝する」
おせちは、遠く、紫に染まる水平線の彼方を見つめた。
「これで、ようやく私たちも故郷に帰れるかな。地球のみんなには、まず状況の説明が大変だけど……」
その冗談めかした言葉は、おせちの心に、新たな重圧と、しかしそれ以上の、温かい決意の光を灯した。
「……ま、成否はともかくとしてこれで仕事は果たしたわけだな。で、ボス、謝礼の方はどうなってんの?せめて美味いもんでも奢ってくれよな!」
アシュリーはそう言って、流し目でストームジーを見やった。
その軽口に、ストームジーはこれまで見せたことのない、人間らしい態度でそっぽを向く。
わずかに揺らめく眼窩の光、それはからかわれた子供のような、
あるいは不意を突かれた大人のような――いずれにせよ、仲間として認めた相手に見せる、
気安い戸惑いの色だった。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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