issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 03 27
「……なるほど。母星から籍を抜き、この惑星に暫定統治機構を樹立し、文明の総意をそちら4名の合議によって形成する、と。その大胆きわまりない構想については、一旦保留といたしましょう。
我々の法体系における『第1発見』の定義に、たえず新たな解釈を突きつけてくる――これまでの貴殿方の、まことに独創的な主張の数々も、ひとまず脇に置くといたします。
そのうえで、仮に貴殿方を『第1発見者』と認めたとして、より実務的な論点へ移らせていただきましょう。――貴殿方は、この惑星の主権を維持し、管理していくための具体的な計画をお持ちですか。
そのために要する資源、技術、そして人員について、いかほどの算段がおありでしょう?」
総督の問いは、再び、彼らの有利な土台へと議論を誘導しようとするものだった。しかし、おせちはその意図を正確に読み取っていた。彼女は、総督の視線をまっすぐに見据え、揺るぎない声で言い放った。
「総督。この惑星の管理計画や、資源、技術、人員について、あなた方にご説明する義務は私たちにはないと考えています。それは、私たち惑星政府の主権に関わることであり、あえて強い言い方をさせていただきますと、『余計なお世話』です」
続けざまに放たれる言葉が、黒曜石の会議室に、はっきりとした意思の楔を打ち込んでいく。
「私たちは、この惑星をただの土地として、所有するだけでも構わないんです。そして、あなた方と共同で運営するつもりも、一切ありません――」
(……これで、論争の大まかなレールは出来上がったはず。あとはこの調子でのらりくらりとやっていけばいいね……その”時”が来るまで)
おせちは胸の内で、ほんのわずかに、しかし確かな手応えとともに笑みを刻んだ。
だが――。
「…………」
クワウバンたちは、あまりに徹底した無反応でとどめの一言に応えた。
おせちは、その全面的な沈黙に、津波が浜へ押し寄せる直前、岸から水がごっそりと引いていく光景を思い起こす。あの、胸の奥をざわつかせる予兆の気配を感じ取っていた。
ゼ=ラクス・ヴァル総督は、なおも身じろぎひとつ見せない。
ただ、その種族の特徴である大きな眼球だけが、おせちをまっすぐに捉え続けている。それは、感心でも怒りでもない。
まるで、聡い子供が立てた周到な計画の、その致命的な欠陥を、言外に指摘する教
師のような、憐憫に満ちた静寂だった。




