issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 03 24
「……?」
アシュリーは、彼女の横顔をじっと見つめながら、わずかに眉根を寄せた。
どれほど真剣な議論の最中であっても、心のどこかで必ず冗談を差し込みたくなる――その悪癖さえ封じ込めることができれば……いや、実際には封じ込められもしないのだが――本気を出したときの自分の弁舌も、決しておせちには引けを取らないと知っている。
だからこそ、いま目の前で展開されている駆け引きに、彼女は妙な違和感を覚えていた。
アシュリーの頭の中では、「おせちなら、このあたりでいったん言葉を切る」という間合いが、
はっきりと見えていたのだ。
ところが、現実の姉妹はその予測を無視し、さらに何事かを続けようとしていたのである。
おせちは、ゆっくりと席から立ち上がった。
「――私たち4名は、この惑星に遭難した“初日”の時点に遡及する効力をもって、法的地位を次のように確定し、ここに公式に宣言します」
「第1に、我々は地球文明における一切の国籍・市民権を放棄する」
「第2に、我々は、この惑星における最初の知的生命体、すなわち『原住種族』として、この星の排他的な主権を樹立し行使する――」
「はあ!?」
「「……えっ!?」」
アシュリー、さな、はちるの3人が、まったく同じ間合いで声を裏返らせた。
「……おい、おせち、お前いま勝手に何決めた!?」
「ちょっ、ちょっと待って!?ウチ、そんなの聞いてないんだけど!もう地球帰れないってコト!?」
「ふ、ふえぇ……」
さなはうまく言葉にならず、おせちの制服の袖をぎゅっと掴む。
それでも当の本人は、姉妹たちの動揺を、最初から存在しないものとして扱った。




