issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 03 19
沈黙が会議室を覆う中、翻訳機の光だけが、次の“鳴き声”を待つかのように、淡く虚ろに脈打っている。
格闘技にたとえるなら、ここまでの2打は、地球側が一方的に打ち込んだ確実なクリーンヒットだ。
クワウバンたちは皆、自分たちの論理の土台がわずかに沈んだことを、ごまかしようのない実感として受け止めていた。
「……なるほど。その点については、貴殿方の主張を承知いたしました。それでは、貴殿方は、いかなる権限をもって地球文明を代表し、この惑星の主権を主張されるのですか?」
総督は1拍置き、翻訳機の声色をわずかに硬くした。
「貴殿方の母星である地球は、いかなる星間組織にも加盟しておらず、我々のデータベースにおけるその登録区分は『タイプC』――恒星間航行能力を持たず、条約機構との接触歴もない未分類文明を一括して収容する、いわば"その他"の棚の存在です。率直に申し上げれば、個別の档案すら作成されていない」
ゼ=ラクス・ヴァル総督の声には、あからさまな疑念の色が宿っていた。
彼は、おせちによる“悪魔の証明”の揺さぶりから逃れるため、議論を別の土俵へと移そうとしている。
だが、おせちは1歩も退かない。総督の言葉を最後まで聞き届けると、信念をたたえた眼差しで、その敵意を正面から受け止めた。
「あなた方の言う『権限』や『加盟』という概念は、そちらの法体系の内側でのみ通用する定義です。私たちがそこに属していないのは事実ですが、それと、この惑星を発見したという事実の重みは、
まったく別の話です」
おせちは、テーブルの上に置いた自分の手を、ゆっくりと開いてみせた。その掌は、この惑星の岩肌を叩き、海を掻き分けてきた、紛れもない「発見者」の手だった。




