issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 03 12
「まさにその通りでございます、管理霊殿。
あなたの仰せのとおり、高次存在は、我らの法体系においていかなる証言権も有しません。
ゆえに、これは本来“交渉”ですらございません。
我らクワウバンが行っているのは、証言権を持たぬ管理霊であるあなたお1人を、平和的に“説得”する作業にすぎないのです。その結果がいかなるものであれ、入植は10日後に開始されます。
もし、あなたが武力によってこれを阻まんとするならば――その時こそ、我々は我々の文明に属する霊団を、この宙域へ正式に招集することになるでしょう」
(……ほら!やっぱりグルだった)
おせちは、自説が的中したことに内心でひやりとした。
礼節という仮面をかぶった最後通牒を正面から浴びて、ストームジーは言葉を失い、視線を落とす。
そして、ほんのわずかに横目を動かし、おせちの様子をうかがった。
金髪の少女は、制服の袖口を指で整えながら腕を組み、静かな表情のまま会談の推移を見届けている。
(……助けられた、か)
胸中でその一言を噛みしめる。
数100年に及ぶ孤独な任務のあいだに、ほとんど忘れかけていた感覚――「仲間」という概念の手触りが、ゆっくりと蘇ってくる。
この若い神々は、漂着しただけの迷子ではない。異常存在でもない。
自分の隣に立ち、時に自らの誇りすら諫めてくれる存在だ。
ストームジーは、黒曜石の会議室に満ちる沈黙の中で、その事実の重みと、どこか胸をあたためる温度とを、確かに感じていた。




