issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 03 07
だが次の瞬間、ゴ=ヴォダは鎌の腕で同僚クワウバンの肩を横殴りに払った。
無理やり自分の方へ向き直らせると、甲高く歪んだ怪物の声で、立て続けに叱責を浴びせる。
人間型の指先が、さなを弾き飛ばした張本人の喉元――ビーズ状の飾りに吊り下がった黒い人工咽頭――を迷いなく突きつけた。
冷水を浴びせられたように、同僚のクワウバンははっと目を見開く。
あわてて自分の喉元にある横長の装置を、指先でなぞった。触れた後を追って、
彼らの文字とおぼしき紋様が黄緑の光と共に浮かび上がり、すぐに消えていく。
つづいて彼は、先ほどの威嚇に等しい身振りを、そのまま爆発的な勢いでなぞり直し、
4人へ向けてこう告げた。
「……これは大変失礼いたしました、客人。生体試料の運搬を急ぐあまり、注意が散漫になっておりました」
6本の腕を大きく広げ、刃を閃かせ、剥き出しの眼球で相手を射抜く――地球人から見ればどう考えても襲いかかる寸前の構えだが、クワウバンにとっては、この捕食者めいた所作こそが、自らの流儀における最大限の謝意の表現なのだ。
案内役のゴ=ヴォダ・ジェィワは、ころんと尻餅をついたさなの様子をうかがい、
頃合いを見て慇懃に手を差し出す。翻訳機から、あの完璧なテノールが再び流れた。
「大変申し訳ありません。うちの者がご無礼を。『廊下は走るな』と、
あれほど口を酸っぱくして言っておいたのですが……。お怪我は?」
「だ、だいぢょぶ……です」
立ち上がらせてもらったさなは、蚊の鳴くような声でかろうじて答える。
アシュリーは、この異形の文明が見せる、過剰なまでに礼儀正しい振る舞いに、
呆れるのを通り越して、思わず肩をすくめた。




