issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 03 04
「そう、言ってたね」
おせちが小さく息を飲む。
「クワウバンは、この星を最初に発見した知的生命体だ。宇宙法では“天体の所有権は、最初に発見した文明に帰属する”と定められている」
「なら、その人たちはここに住むために来たんですか?」
さなが眉を寄せて問う。
ストームジーは神妙な面持ちで首を振った。
「どうも、それだけではないようだ。彼らの開発船団は地形の改変や資源調査を進め、
ゆくゆくはこの星を資源拠点に変えようとしている。
しかし私の使命は、以前も話した通り、この星に知的生命の萌芽を発生させることだ」
その声に、熱がこもる。
「彼らの言う“惑星開発”は、私の“仕事”――知的生命の土壌を築くという万年の計を、
根底から覆すことになるだろう。だからこそ私は、交渉を重ね、この星の主権を巡る取り決めを進めているのだ。だが残念ながら、私のような『霊的な存在』は、そもそもこの権利問題においては論外の扱いらしい」
「なるほど、わかった――」
おせちは、すべてに合点がいったようにうなずき、ふっと笑みを浮かべた。
難解なパズルの最後のピースがはまり、全体像が見通せた者の顔つきだが、
その奥にはどこか悪戯めいた光も宿る。
「?」
ストームジーがわずかに戸惑いを見せる。神の視線が、この人間の少女に注がれた。
「ようは、私たちが“最初の発見者”だって言い張ることで、その人たちの入植計画をやめさせたい、
ってことだよね?」
瞬間、ストームジーが驚いたようにまばたきをした。
「……お前、かなり聡いな」
「ああ、ウチのベンゲル(アーセナルの名監督)だからな」
腕を組んだアシュリーが、どこか誇らしげに、しかしこともなげに言ってみせる。
「とにかく行くぞ。ひとまず今日は、お前たちの素性はぼかしておく。会議には参加せず、
同行者として私の後ろで状況を見届けてほしい」
4人は、己の役割を理解して頷いた。
そして風光の橋をあらためて進み、一個の文明そのものと対峙するために――覚悟とともに、
その人工の輝きの中へ足を踏み入れていった。




