issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 02 19
「キリがないぞ……こんなの!」
沖では、アシュリーが両腕を広げ、全身から烈しい光を解き放っていた。
炎の翼が幾重にも展開し、まるで巨大な蝶が宙に静止するような幻影を描きながら、
迫り来る波頭を迎え撃つ。
放たれた真紅の光壁は、荒れ狂う海面を広範囲にわたって分断し続け、獰猛な高波と衝突するたびに、
爆音とともに蒸気の柱を立ち上げた。
海面は白い霧の膜に覆われ、その向こうで空気が揺れ歪み、熱の層が陽炎じみた模様を描いている。
風が吹くたび、その縁から湯気が崩れ落ちるように外側へちぎれていった。
足もとでは、煮え立つ潮が絶え間なく蒸気を噴き上げ、灼けた風が浜へ向かう水流を押し返していく。
「もたせるんだ、せめて夜明けまで――!」
雷のソイルで、一波を切り裂いたおせちの声が、世界じゅうで鳴り続ける轟音を割って仲間の耳に届く。4人の力がひとつの意思となり、嵐の只中で脈打つ鼓動のように、島の周囲を規則正しく揺らしていた。
風圧にカーディガンをはためかせ、嵐の空を降下するおせちは、
雷のソイルを装填したガンブレードを引き金を絞り、抜刀の構えへと腰をひねる。
彼女自身の輪郭を射出する白紫の稲妻が、黒い水面の端から端までを一気に横断した。
その軌跡に合わせて高波の稜線が凍りついたように静止し、次いで中央に細い溝が生まれる。
溝は瞬く間に口を開き、山のようにそびえ立つ水の壁を芯から断ち割っていった。
上下へ押し分けられたキロメートル単位の水塊が、巨大な幕を乱暴に引きちぎられたかのように外側へひるがえり、断面からは縦筋状のしぶきが層をなして吹き上がる。
分断された一線上には、素の海面が1拍だけ顔を出し、黒い鏡のように空と稲妻を映し返した。
その静止面へ周囲から別の波がなだれ込み、崩れた波頭が、互いにぶつかり合って白い泡の輪をいくつも描きながら沈んでいく。迅雷を纏う余勢のままおせちは水面に大きく弧を描き、
足もとに立ちのぼる水蒸気の渦を蹴って再び上昇し、その場から飛び去った。
だが、そのとき――




