issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 02 17
その果てに、木組みの土台がある。
そこには枯草ぶきの屋根をいただいた丸い建物――水上コテージが立っていた。
潮風にゆるやかに鳴る葦の音、木の香にまじる塩の匂い。
陽射しに照らされたその1棟は、素朴ながらもオセアニア建築の駘蕩と優雅をたしかに誇って、
ちょうど、タヒチあたりの格調高いリゾート地からそっくりそのまま切り取ってきたかのように、
感嘆に値する仕上がりをしていた。
縁側にはかがり火の台がいくつかあり、赤と白の顔料が、ジグザグ模様に塗られた土器製の大鉢では、
淡い緑の観葉植物が風に安らかにそよいでいる。
潮と、燃料のヤニと、枯れ草の匂いが溶け合うその孤立した空間は、
見た目にも、音にも、匂いにも、ひとつの「景色」として完成されていた。
コテージの内部は、手作業の痕跡が随所に残る、不思議な温もりに満ちている。
おせちのガンブレードが切り出したタンスは、刃の跡をそのまま木肌に刻んでおり、
天板の上にも、引き出しの中にも、原始的な紙に木炭で描かれた彼女のスケッチが重なっている。
それはこの星の動植物、あるいは構造色にきらめく4枚の羽をもつ鳥の――生の一瞬を切り取った図案ばかりを貪欲に追及する、幼い研究と夢想の記録だった。
柱は、樹皮をほとんど削らぬままの原木。
その間を、蔓植物の壁が緻密な編み目を描きながらめぐり、
風が抜けるたびに微かな葉擦れの音を奏でる。
窓枠はラタンに似た柔らかな植物の茎をよったものであり、
その四角い枠の中に、海と空の青が鮮やかに切り取られている。
部屋の全体が、手芸の感覚で作られているのだろう、骨格にはあくまで機能美が満ちていながら、
細部には女の子の遊びの、あの独特な温度とこだわりが満ちている。床に敷かれたマットには、
貝殻を紐で縫い留めた装飾が連なり、天井近くには、乾いた花を連ねたガーランドが吊るされていた。
少し甘い香りの漂う空気が、住人の息づかいとともに室内をめぐる。
ベランダには、蔓で編まれたビーチチェアとハンモックがあり、
そこには海面を経由して軒裏に照り、波の躍動を得て落ちてきた昼の光がゆるやかに揺らめいている。
拾い集めた貝殻や、白く乾いた獣の骨が、家そのものに与えるネックレスのよう壁にあしらわれ、
それらがまるで大小の護符のように、全体の優しげな空気感を守り、洗練していた。
縁取りは赤で全体は白い、そんな、コイ風のきらめく鱗に覆われたマナティのような生き物が、
つがいになって磯の中を泳いでいる。コテージの土台から、水の青さが深まるところまで続く桟橋へ、
それと同種の1頭が紺碧の波に白波を蹴立て、帰ってくる。
乗っているのはさなだった。彼女は、この不可思議な魚類の頭をねんごろになでてやると、
階段から橋に上がった。
4人の少女たちは、この原始の惑星での暮らしに、すっかり馴染んでいた。
いまやその肌を隠すのは、島の大きな葉を器用に編み込んだ水着。
頭には、色とりどりの花で編んだ冠。
そのサバイバルにして華やかな装いは、彼女たちの日常着として、すっかり板についていた。
今日も4人は、そのベランダで、自分たちでくり抜いたヤシ(?)の実のジュースを飲みながら、眼下に広がる凪の海原を眺めていた。戦いも、使命も、退屈さえもついに忘れはてた、穏やかな時間。
いまや彼女たちは、スローライフの王者であり、この何もない星で、
「生きること」そのものを、ひとつの壮大な遊びとして心から楽しんでいた。




