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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
Issue#04 I I I I Tales from Topographic Oceans

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issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 02 12

その時、

「みんなー、なんかめずらしいのがあったよ!」

という弾んだ声を土産に、島をひと巡りしていたはちるが闇から戻ってきた。


両腕に抱えられていたのは、見るからに奇妙な果実だった。

ヤシの実を思わせる外殻だが、表面は玉虫色にきらめき、炎の光を受けるたび、

意地悪げに青白い光沢を返す。地球のどんな図鑑にも類似のものは載っていないと、

直感で断言できる質感だった。


「はちう……」


さなが、膝頭に伏せた顔から赤い瞳をのぞかせる。

飢えた瞳が、はちるの抱える物体に釘付けになっていた。

「それ、食べれる?」

おずおずと問いかける声は、潮風と焚き火の音にかき消されそうなほど小さい。


はちるは果実を抱えたまま、顔をほころばせて答えた。

「甘い匂いが中からしてるから、大丈夫だと思うけど……」


「地球の糖と一緒なのかな?」

おせちが、手元の葉をいじりながら首をかしげる。

「毒かもしれないよ?」

さなは、まだ疑念の残る顔で、仲間の反応をうかがった。


「大丈夫、これはフルクトースとほとんど変わんないよ」

はちるは、抱きかかえた果実の1つを顔に寄せ、自信ありげにくんくんと匂いをかいだ。


「まあ、普通の毒なら大丈夫なんじゃないか?私たち、ホントは代謝がないらしいし」

アシュリーは火をかき混ぜながら、肩をすくめて口を挟む。


「そういえばそうだったね」

おせちは苦笑しながら、焚き火の明かりで仲間の顔を順に見渡した。


納得したように、はちるは果実を胸の前でしっかりと持ち直した。

次の瞬間、すべてを軽やかに宙へと放り投げる。光沢を帯びた果実たちは、

焚き火の赤を一瞬まといながらゆるやかに弧を描いた。その頂点を見極めるや、

はちるの腕がしなやかに閃く。


「――!」


爪の一撃が空気を裂き、音もなく実を断つ。ばらまかれるはずだった果実は、

寸分の狂いもなく宙で4つに裂け、それぞれが滑るように弧を描いて落ちていく。


おせちが慌てて広げた大きな葉の上に、それらは吸い寄せられるように着地した。

切り口からは淡く白い瑞気が立ちのぼり、どこかココナッツを思わせる甘い香りが夜風に逃げていった。


「じゃあ――」


しばらくの沈黙。4人は視線を交わし、互いの顔をうかがう。おそるおそる、指先で1切れずつ果肉をつまんだ。


潮騒の音。薪の爆ぜる音。最初に口に運んだのは、やはりさなだった。

そっと齧った瞬間、張り詰めていた表情がほんのわずか緩む。


「……甘い」

おせちもひと切れ口に含み、軽く頷く。


「ああ、いけるな!」

アシュリーは炎の明かりに顔を照らしながら、最初のひと口は慎重に、

やがて皮ごと豪快に齧りだした。


「おいしいね!」

最後にはちるも、自分の分をゆっくりと味わった。


「でもやっぱり……ピザ、食べたい……」


そこに、さながぽつりと呟いた。

声は風の音に溶けるほど小さく、それでも焚き火の光に揺れる唇からはっきりと漏れた。

その目の奥には、束の間の救いを得て、かえって遠い地球の街灯、湯気の立つ宅配箱、

あの懐かしい匂いがふっとよみがえっているようだった。


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