issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 02 11
カルテット・マジコの4人に与えられたものはただ「時」だけだった。
この星には夜と昼以外の変化がなく、凪いだ海は昨日も今日も、そして明日も、おそらく同じ表情で横たわっている。空に浮かぶ紫の星雲はその美しい横顔の輪郭を残酷なまでに崩さない。
アシュリーは指先に灯した小さな炎をただ点けたり消したりし、その単調な変化を虚ろに眺めている。
さなは念動力で浜辺の小石を積み上げては意味もなく崩す作業を、もう何時間も繰り返していた。
はちるに至っては、1日の大半をあくびと昼寝と寝返りに費やしている。
戦いも、事件も、救うべき誰かもいない。 圧倒的な力を持つ彼女たちにとって、
この完璧に平和で完璧に何も起こらない世界は牢獄そのものだった。
物的な脅威など、もはや彼女たちにとって二の次だ。心を蝕む「退屈」こそが、
今や彼女たちが対峙すべき、最も差し迫った問題となっていた。
しかし最初の1日は、途方もない無力感のなかで、なすすべもなく過ぎていった。
砂浜を歩き、何度も海岸線の先を見やり、気休めのように、昼空にもそれなりに濃さで浮かぶ星々の位置を確かめているだけで、陽はあっさりと傾いた。
惑星の地表の様子を調べる案も出たが、アシュリーが空を飛ぶのはストームジーが再びここに姿を現すか、いかだを使ったメッセージのやりとりが成立してからでいいという判断に落ち着いていた。
*
夜が訪れ、4人はアシュリーが起こした焚き火を囲んでいた。昼間に張りつめていた緊張は、
浜辺に打ち寄せる穏やかな波音と、パチパチと爆ぜる炎の温もりによって少しずつほどけていく。
だが、その安らぎは根源的な問題によってすぐさま破られることになった。
――空腹だ。
「……お腹、すいたね」
最初に声を漏らしたのは、さなだった。体育座りの膝に顔をうずめ、その声音には隠しきれない心細さがにじんでいた。誰もが飲み込んでいた禁句が、ついにひとりの口から零れ落ち、静かな火の輪に、
料理の味つけを変えてしまう唐辛子をひと振りしたような、ひりつく気配が走った。
「ストームジーの奴が言ってたイカダ、まだ来ないのか……」
アシュリーが、焚き火を枝で無造作にいじりながら、
不満そうに呟く。火の粉が、夜の闇にきらめいては消える。そのたびに、皆の顔に短い明滅が浮かんだ。




