issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 02 09
「へえ、惑星の土壌作りねえ――。壮大すぎて、よくわからないけど」
ストームジーが語る己の使命。その途方もなさに、アシュリーは腕を組む。
感心と、それ以上に、自分たちとは無関係な「お仕事」への乾いた揶揄が、彼女の相槌には滲んでいた。
「で、具体的にどうやんの?魔法か何かで、えいやって?」
その、あまりにも人間的な問いかけに、ストームジーは少しだけ思案するように、
切れ長の目を細める。
「どうやるかを具体的に?……ふむ。君たちの言語で説明するには、少し霊界から知識をダウンロードする必要があるな」
彼がそう言うと、光を宿す右眼が、またもや膨大なデータが流れ込むサーバーさながらに、
青白い光で激しく明滅した。地球なる惑星に存在する諸言語、文化、比喩表現に至るまで、
彼は上位世界のデータベースにアクセスし、瞬時にその情報を引き出していく。
「ダウンロード?うちの母ちゃんも一応神様なんだけど、そんなことできないけど?」
「……ふむ。それはきっと、その神の通信機能が故障しているのだろう。
どんな霊であろうと、完全な形で顕現できることなどありえないし、永く物質界に留まれば、
残された純粋性も少しずつ損なわれていく」
ダウンロードのシグナルが収まらぬ最中にも、ストームジーは、一片の悪意も、あるいは共感さえもなく、淡々とこの世界の仕組みを告げていった。
「ぶっ――!!!!」
あまりにもあけすけな母への物言いに、おせちが本気で吹き出した。口元を拳でおさえるその隣で、
彼は、眼下に広がる広大な海原をそっと指し示す。
「……そうだな。私の仕事は、お前たちの星の文化でいえば、シチューをかき混ぜるようなことだ。
この惑星の海流と気流、そのすべてを、霊界に存在する『設計図』に従って、
常に適切な状態に保ち続ける」
彼は空を仰ぎ、雲の流れを目で追う。
「――生命が生まれる、ただその1点に向けて、気の遠くなるような時間をかけて、星の環境を調律する。だから私の権能は、さっき見せたような多岐にわたる自然現象の制御なのだ。
余の天体ならば幾人かの自然霊が分担して行うタスクを、ここではわたし1人で回しているがな……」
「自然霊?管理霊とか色々言ってるけど、ウチ全然よくわかってないカモ……」
そこに、はちるが困惑で小首を傾げる。
「そうか。なら、すこしだけ講義をしてやる。いいか、よく聞け」
ストームジーは教師のように指を立てた。
「……まず、この宇宙の知的生命体の霊魂には大きく分けて2種類ある。人間霊と自然霊だ。人間霊はお前たち」
彼は、4人を指さす。
「そして自然霊とは、私や、君たちのご母堂のような神(DEITY)、あるいは精霊、妖精、妖怪と呼ばれるようなものだ」
返す手で、彼は自分自身を指し、さらに残りの低級な存在の名を指折り挙げた。
「どちらの種類の魂も、唯一絶対なる創造主(GOD)の庇護下、無限の果てにある『完成』を目指し、
永遠の大道を歩む存在であることには変わりない。だが、そのアプローチ――生き方に違いがある――」
「――自然霊は世界の管理、それのみに専心し、そこから得た功徳だけを糧に成長する存在だ。ゆえに『管理霊』とも呼ぶ。宇宙という舞台装置の裏方であり、管理者だ」
そして彼は、4人の目を見る。
「一方で人間霊には、成長を実現するための無限の手段が与えられている。つまり人間とは、我ら自然霊が管理し、整えた世界の住人として、自由意志を行使し、霊的な成長を図る存在なのだ」




