issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 02 05
この無礼な挑戦にも、ストームジーは眉ひとつ動かさなかった。片方だけ妙に青白い光を宿す瞳が、
まず眼前の太陽神を、ついで海面に浮かぶ3人の少女たちを、まるで未知の標本でも鑑定するかのように淡々と観察する。
やがて、彼はゆっくりと口を開いた。
「私の名前はカイルス・ヴォー。そのストームジーとやらでもべつに構わないが……。見たところとても若い神だな。管轄天体は?」
その声音には驚きも怒りも微塵も宿っておらず、ただ純粋な知的好奇心だけが、
深い井戸の底から湧き上がるような響きとなって伝わってきた。
問いに答えたのは、海上で怯えるさなを片腕で支えるおせちだ。
彼女はストームジーの視線を真っ直ぐに見据え、凛とした口調で言い返す。
「地球って星。――でも、神じゃないんだ」
「……どういうことだ?」
ストームジーの眉が、初めて、ほんの僅かに動く。
だが、彼の知的な探求心は、おせちの、より切実な声によって、無遠慮に断ち切られる。
「その問答の前に、まず落ち着ける場所が欲しいんだけど?話はそれから!」
唐突な要求に、ストームジーは一瞬、虚を突かれて沈黙する。
だがやがて、その唇の端に、面白い玩具を見つけた子供のような微かな笑みを浮かべた。
彼はアシュリーから視線を外し、海上の3人へと、すっと片手を差し伸べる。
すると、どこからともなく暖かく力強い風が巻き起こった。
嵐とは違う、明確な意志を持った気流は渦となって、
おせち、さな、はちるの3人を柔らかな繭のように優しく包み込むと、水面からふわりと掬い上げた。
「えっ……わっ!?」
ストームジーが開いたままの手を裏拳のように払うと、悲鳴を上げる間もなく、3人の身体は風の揺りかごに乗せられ、水平線の彼方に見える孤島へと、一直線に、しかし驚くほど速やかに運ばれていった。




