issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 01 37
「……で、結局、あの脳みそにも逃げられたってワケ」
ホットショットが、瓦礫を蹴飛ばしながらあっけらかんと言うと、イムノは神妙に応じた。
彼女たちは、マクロブランクが放棄した研究施設――ガラクタと超技術の産物が混然となった、
巨大なドーム状の空間を探索していた。
「まあ、急なことだし仕方ないね。それより、彼らがここで何をしようとしていたのか……それを突き止めるのが先決だよ」
イムノが冷静に状況を分析する傍らで、スヌープキャットは好奇心に満ちた目で、
半壊した機械の残骸をくんくんと嗅ぎ回っている。
ミーティスは、そんな姉妹の背中にぴったりとくっつき、小動物の警戒心で不安げに周囲を見渡していた。
「……ん? ねえ、これ何だろ?」
スヌープキャットが、瓦礫の山から突き出た奇妙な装置に鼻先を寄せた。
それは黒曜石のような滑らかな素材でできた、高さ2mほどの角柱だった。
表面には亀裂が走り、所々から内部の配線が覗いている。
「危ないから触っちゃダメだよ、はちる」
イムノが注意するが、その声が届くより早く、ホットショットが口を挟んだ。
「ただのデカい置物だろ?もしかして、ちょっと叩いたら動くんじゃないの?パーカッシブ・メンテナンスってやつ?」
「やめなよ、アシュリー!」
イムノの制止も聞かず、ホットショットは「えいっ」と、オベリスクの側面を軽く、
しかし的確に蹴りつけた。まさに、その瞬間だ。
ヴーーーーーン……。
低い唸りと共に、オベリスクが青白い光を放ち始める。亀裂の入った表面に、無数の光の線が走り、
見たこともない星図のようなものが磨き上げられた表面に明滅した。
「ひゃっ!?」
突然の光と音に驚いたミーティスが、小さな悲鳴を上げる。彼女の身体から、
紫色の霊力のオーラが、驚きに反応するように、反射的にほんの一瞬だけ揺らめいた。
その間にもオベリスクの、パイプに繋がれた丸いコアは確実に駆動を続け、次の瞬間、
唸りは甲高い絶叫へと変わる。
黒い柱から放たれた閃光が、ドーム全体を、そして4人の少女たちを飲み込んだ。




