issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 01 34
「……なるほど。これからは『頭だけ飛んで逃げる』のが敵のトレンドになるわけだね。
……まあ、基地を叩けただけ、良しとしようか」
ぼやくおせちたちの足元には、主を失い活動を停止した要塞の残骸―― 砕け散り、
はてしなく続くゆるやかな斜面へと姿を変えた3000m級の山体が、
昼の冷たい空気の中に、巨大な傷跡となって静かに横たわっていた。
*
主を失った蛇蝎山の司令室は、静まり返っていた。先の衝撃で外壁ごとひしゃげたコンソール群が、
今も断末魔のように火花を散らし、壁のモニターは歯抜けに脱落して、
液晶の破片を床に広げている。かろうじて生き残った画面も、もはや意味をなさない警告を、
無機質に点滅させているだけだった。
「……後始末は、また今度でいいか」
ホットショットが瓦礫の山を乗り越えた、その時。彼女の視線が、
区画の片隅で不自然な光を放つ隔壁扉に注がれた。そこから、聞き覚えのある甲高い声が、
くぐもって漏れ聞こえてくる。
「――?」
……ホットショットは、用心深く扉へ近づくと、炎を纏ったままの手で、
民家の壁ほどもある巨大な扉を掴む。凄まじい熱に鋼鉄が指の形を拡大しながら溶け、
さらに力を込めると、扉は弾けるような音を立ててねじ曲がり、いとも容易く引き剥がされた。
ねじれた鋼鉄の残骸が、耳障りな音を立てて剥がれ落ちる。 ホットショットが蹴り飛ばした隔壁の向こうにあったのは、薄暗い機材の格納庫――そして、その中央で無数のケーブルに囲まれ、哀れに縮こまる、見慣れた脳髄の姿だった。




