issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 01 32
上体の大半を吹き飛ばされた大妖異の躯体は、波紋の絶頂で停止した液体のように歪みつつ、
コンマ何秒かの間、奇妙な均衡を保ち続ける。その断面には苦痛の色すらなく、層状に刻まれた削痕がただ機械的な精密さを誇示していた。
そして――炸裂。
岩肌の黒も、空の青も、樹々の緑も――ありとあらゆる色彩が白に呑まれ、
景色は光と影だけのネガフィルムへ変換される。
閃光が退くと、世界は何よりも先に音の再来を求めた。束の間の真空から解き放たれた大気が轟音とともに爆心地へ引きずり込まれ、今度は衝撃波が同心円状に広がり、森を揺らしながら端から端まで駆け抜けた。葉や枝は巻き上げられ、幹や岩の表面を削りながら、衝撃波は立体的なうねりを描く。
大地は瞬間的に融解し、吹きすさぶ白んだ熱風の中で、内から外へと、ガラスのように滑らかに鍛え直されていく。周囲の岩や樹々は粒子へと分解され、キノコ雲と共にどこまでも空高く舞い上がった。
空気の圧力と温度差により、微細な破片が旋回し、光に反射して一瞬の光芒を散らす。
それは、核爆発にも等しい、純粋な力の顕現だった……。
破壊の嵐が過ぎると、雪のように浄化された霊力の粒子が、微細な軌道を描きながら舞い降りる。光を帯びた粒子は地面に届く前に揺らめき、溶けるように空間へ消滅する。
残されたのは、洗い清められたかのような静寂と、冷たく漂うオゾンの匂いだけだった。
「ば、馬鹿な……!?我が秘策までが、こうも容易く……こりゃいかん!」
絶対の切り札さえ、まるでないもののように打ち砕かれた瞬間、シャカゾンビの心中にひとつの切実な感覚が忍び寄る。2500年という魂の盤石をもしばし忘れさせる、原初的な戦慄が骨格を軋ませる。
「……もう!逃がさないんだからね!」
厚い靴底が岩肌に食い込み、スヌープキャットが、ネコ科の健脚に任せて大地を蹴る。
直後、彼女はスカイブルーの空を背負った。その振りかぶられた片側の手には、先刻、機械の軍勢を地形ごと圧倒した、あの、絶大の力がまちがいなく凝縮されていた。
身体の軸を、千切れんばかりにねじり、肩甲骨を引き、拳が弾丸のように標的へと突き出される――その軌道は、まさに一撃必殺の意思そのものだ。
しかし、その拳は不倶戴天の敵に届かない。
――ガコン!
一撃がシャカゾンビを捉える寸前、戦場に、あまりにも場違いなロックの解除音が響き渡ったのだ。




