issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 01 31
「おのれ、小賢しい真似を……!ならば、力には力を!しもべどもよ、我が元へ集え!」
シャカゾンビが憎悪を込めた甲高い絶叫を放つと、あたりの空気がびりびりと震えた。
杖を力強く握り、天に突き上げた甲冑の腕が、そのまま悪しき団結の象徴となる。
彼の呼び声に、ミーティスの浄化を逃れた邪霊たちが一斉に反応した。樹海の奥深く、
一心不乱の特攻を続けていた霊体たちが、見えざる力によって地面から剥がされ、
主の元へと強制的に引きずり寄せられる。引き伸ばされる粒となり、黒い液状に溶かされていく霊体は、無数の苦悶の声を発しながら、シャカゾンビの頭上へと集まっていく。
黒霧の渦は密度を増し、内側から膨らみながら輪郭を得ていく。
まず、不定形の塊から、どこが肩でどこが胴とも知れぬまま何本もの腕が突き出た。
次いで、その表面に、おびただしい数の顔が浮かび上がる。
いずれも苦痛に歪んだ表情のまま、目と口は禍々しい黒糸で固く縫い留められ、声なき叫びだけが、
内側からとめどなく漏れ続けていた。
やがて渦は完全に一体化し、巨大な1体の大妖異へと姿を変えた。
数多の腕と顔を身に刻んだその異形は、周囲の光を吸い込むかのように昏く、
ただ鎌首をもたげているだけで、見る者の胸に絶望と嫌悪を植え付ける。
悪意そのものが凝縮され、ついに戦場へ具体的な輪郭を得て顕現したのだ。
それでも、冒涜的としか言いようのない光景を前にしてなお、イムノは動じなかった。
雷のソイルを込めた一撃を、すれ違いざまの胴打ちとしてハヴォックに叩き込み、そのねばつくものを払うようなバッティングで彼の巨躯を吹き飛ばすと、振り返りざまに、淡々と手首を揺らしてガンブレードを排莢したのだった。
親指の腹で、冷静に次の魔弾がシリンダーへ押し込まれていった。
「……ソイル」
彼女の身体を包む、こんにゃく味のソイルがもたらしたオーラは、まるで水銀のように滑らかに、そして冷ややかに体表を揺らめいていく。
「……大トリとしてのインパクトは認めるけど、まあ……正直なとこ33点ってとこかな!――腕とか、
それだけで埋めるんじゃなくて他のアイディアが欲しかったよね!」
肥大化したガンブレードの銃口に、あらゆる色彩が吸い寄せられるように、
水色の輝きが渦巻いて収束する。その莫大な光量は、空間さえわずかに歪ませ、
この刃先から放たれる一撃の、運命的な引力を予感させた。
そして――
大気が静止し、世界からすべての音が遠ざかった次の瞬間。
イムノのガンブレードが放った荷電粒子砲は、壮絶な発射音とともに唯一無二の「閃光」へと変わり、
――ギュンッッッッ!!!!
空間を縦断して大妖異の胸部を撃ち抜いた。
「ギ――!」
駆け抜ける水色の光束は、
大妖異の上体を豪快に抉り取った。おどろくべきは、着弾のとき、
その黒い体表が、固体ではなく、粘度の高い液体のごとく振る舞ったことだろう。
衝撃点を中心に円形の波紋がまたたく間に広がり、触れた部分から一気に弾け、
原形を失った三日月状の姿へと変わり果てたのである。裂けた表面は張力の限界のまま空間にとどまり、飛び散る直前の緊迫を宿す。通り抜けたビームは、触れた空気までが波打つ視覚効果を生み出して、
視界の果てまで伸びていく。
勢いを失わぬ水色の光束は、樹海の樹々を押し沈めながら地平線へ駆け抜け、
遠方の山岳にまで同じ軌跡を刻んだ。成層圏を突破し、破線のような輝きを引きずりつつ、
やがて宇宙の闇へと吸い込まれていった……。




