issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 01 29
爆煙が晴れ、鋼板に深くめり込むプロディジーの姿を確認したミーティスだったが、
余韻に浸る間もなかった。急速に、戦場の熱が奪われたからだ。
耳を圧していた爆音や金属音が遠のき、かわりに、地の底から響く何かの唸りが世界を覆い始めた。
腐った土と、墓場の匂いが不思議に鼻をつく。
「――!」
背筋を駆け上がる直感に、ミーティスは弾かれるように身を翻す。
視線の先、荒れ果てた斜面の向こうから、黒い影の塊が這い上がってくる。
手足をぎこちなく動かす低級霊の集団は、無数に集まることで、
まるでひとつの巨大な生命体のように見えた。
「おせちぃー!……わたしの番かなぁ!?」
ミーティスの、澄んだ空に舞う白い旗のような声がもうひとつの戦場へ届く。
そこでは、身長が倍以上もあるハヴォックの豪腕を、イムノが涼しい顔でいなし続けていた。
彼女のガンブレードと巨拳が衝突するたび、足元の地形が少しずつ剥がれ、吹き飛ぶ。
「……ちょっとそうかもー!」
イムノは彼との剣戟に意識を向けたまま、しかし言葉はミーティスへ向けて、楽しげに返す。
「うるせえな! 俺様と戦ってる最中によぉ!」
ハヴォックは苛立ちを隠そうともせず吠えた。拳が高層ビルをも突き上げる勢いで振り上げられる。
イムノはその上昇の気配を読み切り、鉄棒での逆上がりを助ける踏み台を蹴るように、彼の手首を軽く踏みつけて力の向きをそらした。
そのまま足裏に受けた反動を全身へ流し込み、身体をふわりと空へ送り出す。
腰を軸にくるりと1回転しながら、拳の外側をかすめて抜ける軌道は、急加速とは無縁の、風の流れに身を預けた柔らかな弧を描き、かえって彼女の身軽さを際立せる。




