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カルテット・マジコ  作者: piku2dgod
Issue#04 I I I I Tales from Topographic Oceans

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issue#04 I I I Tales from Topographic Oceans CHAPTER 01 27

「カーディB!急ぎ我輩の周りに魔法陣を作り上げろ、森中の妖異をこいつらにけしかけてくれる!」


スヌープキャットの拳が巻き起こす暴風の中、シャカゾンビの絶叫が、かろうじて遠くまで飛んだ。

その声に応じ 、上空を旋回していたカラスが、黒い目に太陽の光をくぐらせ、漆黒の矢と化して急降下する。その嘴には、不釣り合いなほどカラフルな高圧カラースプレーの缶が、固く咥えられていた。


カーディBは、激しい戦闘を繰り広げる2人の周囲を、超低空で、舐めるように飛びながら、

翼の微妙な傾きで、砕け散る岩肌の上に複雑な魔法陣を鮮やかに描いていく。白い塗料が黒々とした岩面に呪いの幾何学模様をどこまでも刻みつけていった。


「……あっ!また変なことしようとしてる!?」

「フハハ、その通りだ!だが今のお前に、それを妨害する余裕はないはずだ!」


スヌープキャットの猛攻は、間違いなくシャカゾンビを圧倒していたが、だからといって、

手を抜けるほど実力差は彼我の間になく、空を舞うカーディBの妨害までは手が回らない。


そして、ついに――シャカゾンビがその好機を掴んだ。

スヌープキャットが大上段から拳を振り下ろした刹那、そのわずかな間隙を狙い澄ます。

彼は両の手に魔力を集中させ、自らの命脈を焦がすような熱と共に、杖を横薙ぎに振り抜いた。


「滅びのいかずちよッ!」


咆哮と同時に、紫電が空間を貫く。

奔出する雷光は速球を打つバットのように、有無を言わさぬ勢いでスヌープキャットの胴を叩きつけた。

直撃の瞬間、彼女の身体がくの字に曲がり、光の尾を引きながら宙を滑空する。


「――ッ!?」


次の瞬間――スヌープキャットは背後の岩壁に激突する。

数10m先の岩塊が爆ぜ、網のような亀裂が一気に走った。


*


シャカゾンビは迷わず転移術式を発動し、気付いたときには広大な魔法陣の中央に姿を移している。

地上絵にも匹敵する巨大な白線の魔法陣が、その足元から淡い青い光を放って脈動を始める。

彼は腕を高く掲げ、その身を反らす。


「▽●□☆∽※∻§≒Ω××@◎#◎≠≡!!」

それは、人の紡ぐ言語の域を超えていた。空間そのものを歪ませ、聞く者の鼓膜ではなく魂を直接戦慄させる、不浄な音の連なり。詠唱が加速するにつれ魔法陣の輝きも光の裂けんばかりに増し、

周囲の空気は揺らぎ、景色が歪み始めた。


呼応するように、蛇蝎山の樹海すべてが、ぞわり、と一度大きく身震いした。

生命の息吹ではない。死と憎悪に満ちた、底知れぬ悪意の胎動。木々は黒々とその影を深め、

風もないのに枝葉が不自然にざわめき、森が不気味に蠢き始めた。


「クハハハ! 愚かな小娘どもめ!我が眷属の前に、ひれ伏すがいい!」


甲高い哄笑が山に木霊する。その声が引き金だった。

樹海の奥、闇が最も濃い場所から、何かが溢れ出してくる。最初は気配もなく、ただ闇が盛り上がり、こちらへ向かってくるように見えた。


そして次の瞬間。


――ザザザザザザザッ!!


無数の硬い肢が、地面や木々を掻きむしる耳障りな音が、絶対的な轟音となって押し寄せる。それは、手足の異常に長い、おびただしい数の黒い影の群れ。何10万というその群れが、木々の間、下草の上、

あらゆる隙間から、黒い塊となって溢れ出てきたのだ。


1体1体の顔は、ジャパニーズホラーで描かれる、湿度の高い恐怖を纏った霊の典型、

目と口の部分だけが暗く落ち窪んだ、表情のない貌をしている。その窪みの奥でには、怨嗟と飢餓の光がぎらつき、弛緩した口からは、粘つく黒い涎が絶え間なく滴り落ち、

地面をじゅうじゅうと焼いて蒸発させた。


「アアアア……」

「オオオオ……」


妖異どもの、地獄の底から響くような呻き声の合唱が、生者への羨望を剥き出しにして少女たちに殺到する。それは軍勢という枠には収まらない、大地そのものが吐き出した、純粋な破壊と捕食の意志。

世界から光を削り取るように、邪霊の巨大な群れが山麓を取り囲み、浸食を開始した。



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