【やり直し軍師SS-618】騎士団修行(18)
当代最強の槍さばきを、間近で堪能する。
ジュノス達が学びの多い時間を過ごしていると、ようやく双子がやってきた。
「おっ、なんだ?」
「地味なことしてんな」
そう口にする双子の後ろからは、ゾロゾロと訓練場に入ってくる兵士たちの姿が。
一人や二人ではない。何事かと思うほどの人数が続く。その兵士に混じって、商人らしき前掛け姿の人物も確認できた。
「これはなんの騒ぎだ?」
たまりかねたウラルが問えば、双子は大きく頷き、胸を張る。
「リーゼの砦の仕合といえば賭けと祭りだ」
「第七騎士団からの伝統だぞ?」
「兵士たちに娯楽は必要だ!」
「第五騎士団は堅っ苦しいからな!」
ウラルが第七騎士団所属のリュージェに視線を移せば、リュージェは大袈裟に顔を振った。つまり、第七騎士団の伝統ではない。
「またそんないい加減なことを……」
ウラルが呆れると、双子が揃って口を尖らせる。
「嘘じゃないぞ。実際、私たちが戦った!」
「トールと一戦して大盛り上がりだ!」
「ウラルも王族として伝統は大切にすべきだ」
「先人の行いに敬意を払うべきだ」
なおも強固に主張する双子。
「……そんな話は聞いたことがないが……ちなみに、その時は誰が勝ったのだ?」
何気ないウラルの問いに、途端に視線をそらす双子。
「……若者が過去など振り返るな!」
「そうだ! 王族として未来だけ見据えていろ!」
などと、ついさほどとは真逆の主張をし始める。
……少なくとも、ユイメイの姉御と、トール将軍がこの場所で戦ったのは事実のようだ。しかも勝ったのはトール将軍。そうでなければ、双子はこんな反応をしない。
ウラルもジュノスと同じように考えたようで、これ以上二人と問答しても意味がないと悟り、今度はベクシュタットへ顔を向けた。
「ベクシュタットはいいのか?」
「衆目があるは、望むところ」
相変わらず必要最小限の言葉だが、今のはジュノスにも意図が分かった。
戦場は常に人の視線の中にある。この程度の観客相手に気負ったりするようでは、話にならない。ベクシュタットはそう言いたいのだ。
「ウラル殿下、私はこの状況下でも一向にかまいません」
帝国軍人のウェルトが言葉を挟み、ジュノスもそれに同意する。
「やるならさっさと始めようぜ」
たった今見て覚えたばかりのベクシュタットの槍捌き、それを試してみたい気持ちでいっぱいだ。
ジュノスからもせっつかれたウラルも、完全に諦めの表情になる。
そんなウラルに向かって、
「あ、賭けてんのは内緒な」
「怒られるからな」
と言い放つ双子。やりたい放題である。
「……私も一応、叱らねばならない立場なのだがな……。まあいい、本人達もやる気ならばこれ以上止めはせん」
「なんだ、ウラルは出ないのか?」
てっきりウラルも参加すると思っていたのに、静観するような口ぶり。ジュノスの疑問に対して、ウラルは軽く頷いた。
「出たい気持ちもあるが、ジュノスと一緒に参加しては、第三騎士団同士で連携をとると思われるだろう。…それを勝ち負けの理由にされては、不本意だ」
その言葉に反応したのはベクシュタットの弟子、フォラン。
「私は三人まとめてお相手するつもりでしたので、参加されてもかまいませんよ」
なかなかに不敵な発言。ウラルの目つきも好戦的なものに変わる。
「ほお。大した自信だ。しかし、大口はジュノスに勝ってからからにしてもらおう」
「おいちょっと待てウラル。その言い分だと俺よりお前の方が強いように聞こえる」
「まあ、わずかだが、私の方が上だろう?」
「お前まだ、ザックハートのジジイに一太刀も浴びせてねえだろうが。俺の方が上だ」
「なら、先にここで順番を決めるか?」
「面白い、やるか?」
「ちょっと、二人してやめなさいよ!」
止めようとするリュージェ、
「いいぞいいぞ」
「もっとやれ」
煽る双子。
最終的にベクシュタットの意向によって、ジュノス、フォラン、ウェルトの三つ巴の戦いが行われることに決まったのである。




